坂本鉄男 イタリア便り 身辺警護は難しい
去る12月中旬にベルルスコーニ伊首相がミラノの大寺院前広場で暴漢に襲われ顔面に歯を折るなどのけがを負った。大聖堂の模型を顔に投げつけられたのだ。
それから10日余り後の24日夜には、バチカンのサンピエトロ大聖堂で恒例のクリスマスミサのため祭壇に向かって歩いていたローマ法王ベネディクト16世に若い女性が柵を乗り越えて飛びかかった。法王にけがはなく、予定通りミサを執り行った。
首相、ローマ法王ともに周囲を厳重にボディーガードに囲まれて、守られていたにもかかわらず、事件は起きた。
数年前もローマで男に襲われ、頭部を負傷したベルルスコーニ首相の場合は、首相専用の屈強なボディーガード5人が首相の周囲2メートルを取り巻き、10メートル以内には群衆に紛れた別の多くのボディーガードが配置されている。
一方、ローマ法王庁には儀式などに花を添えるスイス人衛兵110人のほか、公式行事に出席する法王の身辺警護に当たる130人の私服警官がいる。
両事件ともに、犯人は軽い精神障害者であり、ピストルなどの武器が使われなかったのが幸いという点で共通している。
イタリアでは、人道的見地から精神病院は1978年に廃止されてしまっている。不特定多数の人との接触が求められる要人の警護は警備の人数だけでは解決されないという問題点を提起した事件であった。
坂本鉄男
(1月31日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)
(1月31日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)
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