2010年12月26日

坂本鉄男 イタリア便り クリスマスコンサート


 12月のクリスマス前に必ずイタリア上院ではクリスマスコンサートが開かれ、テレビ中継される。

 これは慈善コンサートで、今年も19日正午過ぎから、おなじみのクラウディオ・シモーネ指揮の「イ・ソリスティ・ベネティ」と盲目のテノール歌手、ボチェッリを迎えて開かれた。

 いつもは与野党議員が口角泡を飛ばす上院議場には、大統領、上下両院議長、与野党の議員有志とその家族のほか、一般人も1人当たり最低120ユーロ(約1万3千円)の寄付金を払いビバルディ、ヘンデルほかの歌曲や名曲の演奏を楽しんだ。

 この寄付金は慈善事業に寄付され、昨年度はローマの国立小児専門病院に寄贈されている。イタリア下院も上院も、ローマ市内のど真ん中の交通至便のところにあるので音楽会には便利だ。当然のことながら政府与党が右翼であろうと左翼であろうと、国会でのコンサートや大統領が出席する音楽会やオペラでは必ず全員起立のうちにイタリア国歌が演奏される。

 わが国の国会も議員バッジを付けた者だけが独占するのではなく、たとえイタリアのように音楽を理解する議員が多くないにせよ、時にはコンサートなどを催して、主権者たる国民が手軽に出入りできる機会を作るべきではなかろうか。

坂本鉄男
(12月26日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2010年12月19日

坂本鉄男 イタリア便り 外国人養子


 いくら子供がほしい日本人の夫婦でも外国人の子供を養子にするのはそう簡単ではないだろう。今までの日本社会に存在してきた人種的偏見を知っているからだ。

 この点、自分たちの曽祖父母の時代から外国に多数の移民を出し、外国人の親戚(しんせき)や外国に居住する親戚が多いイタリアでは、社会的人種偏見は少ない。

 実際、イタリアは米国に次いで外国人養子が多い国で、例えば2008年が3951人、09年が3964人と近年は3000人台を維持している。

 また、子供の出身国にも時代的変化があり、以前はベトナム、カンボジアなど、どちらかというとアジアの貧困国が多かったが、最近は旧東欧圏と南米諸国が多いという。

 確かに昨年度はロシアが704人と一番多く、次いでウクライナ、コロンビアなどが続く。

 合不法を問わずイタリアには多数の移民が住み、すでにローマだけで出生地がローマでありながら外国パスポートを持つ子供が5万人もいる。彼らは成年になるとき、ほとんどがイタリア市民権を取得し普通のイタリア人として一生を過ごすと推定される。むごい親に虐待されて死ぬ子供の記事を読むたびに、日本にもらう人がないなら外国に養子に出す方法もあっただろうにと思ってしまう。

坂本鉄男
(12月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2010年12月12日

坂本鉄男 イタリア便り 職業に貴賤はない


 わが国では「駅弁大学」の名前が生まれたほど各地に公立・私立大学が乱立し、大学出身者でも、ひと昔前なら旧制の中・高卒の職種に就職するのが普通になった。

 だが、日本と比べ大学の数が少なかったイタリアでは、大卒者は「デスクワーク」に就くのが当然と思われてきた。しかし最近は大学の数が激増して大卒があふれ出し、しかも大不況を迎えると職のより好みなど不可能になってきた。

 例えば、最近、文化財省が行った守衛採用試験である。イタリアには国立・公立・私立を合計して3340もの博物館・美術館・遺跡がある。その職員総数約1万2千人のうち、今年と来年で約1割の退職者が見込まれている。

 このため、手始めに400人の守衛公募を行ったのだが、なんと応募者が約16万人、書類選考合格者が5万人以上、最終試験の筆記・面接試験に合格した者は397人であった。しかも、専門職の学芸員ではない守衛試験の合格者の90%が大学卒であった。

 イタリアの博物館のように所蔵品のごく一部が陳列され、残りは倉庫で半永久的に眠っているものが多ければ、美術や考古学に興味のある人には格好の職場である。イタリアの大学卒にも「職業に貴賤(きせん)はない」ことが分かってきたのであれば幸いだ。

坂本鉄男
(12月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2010年12月 9日

イタリアの名曲を歌う会 第1回発表会

  PC072641.JPG「イタリアの名曲を歌う会」がイタリア文化セミナーとして発足して約3年、日頃の成果をご披露すべく第1回の発表会が12月7日開催されました。

授業は月に2回のペース。しかも曲目を決め、発表会用の本格的な練習を始めたのが今年の8月に入ってからという限られた時間で、全員が自身で選んだ一曲を丁寧かつ立派に歌いあげました。
練習よりも当日のリハーサル、リハーサルより本番と、どんどん声量や表現が豊かになっていく姿に、「歌詞を忘れたらどうしよう」「途中で歌が止まったらどうしよう」と我が子を見守る親の心境だった講師の本村先生もホッと安堵の表情でした。

PC072671.JPG PC072688.JPG PC072631.JPG今回は初めての発表会と言う事で、観客席には日伊協会会長をはじめとした協会関係者と内輪のごく少数の見学者のみという会でしたが、来年以降はもっと多くの方に成果をお見せできるのではないかと思います。

ご指導いただきました本村先生、優しくピアノ伴奏をしてくださったルーフォ先生、そして素敵な歌声をご披露くださった生徒の皆様、お疲れさまでした。
そして、感動をありがとうございました。

日伊協会K

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プーリア便り40

Ciao dalla Puglia!

早くも12月、クリスマスももうすぐですね。
この時期、日本ではお歳暮を贈りあう習慣がありますが、イタリアでもお歳暮のように仕事上でお付き合いのある人同士でクリスマスプレゼントを贈りあうことがあります。
最も多いプレゼントはハードチーズ、ワイン、サラミや生ハム等、保存の利く飲食品。
中でもマルティーナ特産の生ハム“カポコッロ・ディ・マルティーナ・フランカ(capocollo di Martina Franca)”はプーリア人なら誰もが喜ぶ嬉しいもののひとつ。
今回は“プーリアインカミング(Pugliaincoming)”でご案内している生ハム生産者見学の様子をお便りします。

“カポコッロ・ディ・マルティーナ・フランカ”とは豚の首(collo)のお肉から作られ、古よりマルティーナ.フランカの肉職人の非常に高い力量を示す生ハムとして、17世紀には既にその名が知られ、尊重されていました。
認定された生産者が、厳しく定められた使用材料や熟成方法、熟成期間等を経て伝統的手法で作られるもののみがこの名称を用いることができ、弊社でご案内しているお肉屋さん“サン・パオロ”ももちろんその認定を受けています。
 現在、スロー・フード協会保護食品にも認定されています。

見学はまずは香ばしい香り漂う燻製室から。
アーモンドの殻を使って8時間燻すことで風味をつけています。

IMG_0718_ridimensionare.jpgそして燻製されたハムやサラミ類の並ぶ熟成室へ。

IMG_0714_ridimensionare.jpgちょうど1週間たっていい具合に生えたカビがお肉の水分を吸ってくれています。

IMG_0721_ridimensionare.jpg「カビ!」と聞くとちょっとギョッとされるかもしれませんが、これはおいしいハムやサラミを作るために欠かせない良いカビ。
更に1週間たったらカビを拭いてできあがりです!
倉庫では既にできあがった500本以上の“カポコッロ・ディ・マルティーナ・フランカ”がクリスマス商戦に向けて出番を待っていました。

こちら向かって左が“カポコッロ・ディ・マルティーナ・フランカ”、真ん中が“シガレッタ(sigaretta:タバコの意)”と呼ばれる細身のサラミ、右が“ラルド(lardo)”と呼ばれるラードをスライスした状態です。

P2140003_ridimensionare.jpg“カポコッロ・ディ・マルティーナ・フランカ”は普段の食卓はもちろん、パーティーの際に前菜として使ったり、パニーノにはさんだり、と大活躍してくれますよ!

“プーリアインカミング”では工房見学後、併設のお肉屋さん店頭へ移動し、試食いたします。もちろんお気に召した場合、購入も可能です。マルティーナ・フランカならではの味をお楽しみいただき、ご自身もしくは大切な方へのお土産やプレゼントにいかがですか?
ハム、サラミ類は真空処理を施してパックしてくれますので持ち運びも安心です。

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詳しくは弊社HPをご覧いただき、お問い合わせください。



IMG_0723_ridimensionare.jpg皆様、おいしいものと共に良いクリスマス&よいお年を☆
Vi auguro un Buon Natale ed un felice nuovo Anno mangiando cibi squisiti!

 

2010年12月 7日

第20回イタリア語スピーチコンテスト

12月4日、午後1時より、イタリア文化会館アニェッリホールにて、第20回イタリア語スピーチコンテストが開催されました。

今回13名の参加者は高校生からシニア世代の方までと年齢層も幅広く、学生の方やさまざまな職業の方が、いろいろな経験のもとに自分の想いをスピーチで競いました。

*結果*
第 1 位  本田楓子  「日本とイタリアをつなぐ竹の橋」
第 2 位  天野萌木  「休息の家」
第 3 位  鈴木千佳子 「日本への私の貢献」
朝日新聞社賞 田中詩音  「塩なしパンの味」

PC042587.JPG以上の方々が入賞なさいました。
入賞者の皆様おめでとうごさいました。

日伊協会J

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2010年12月 5日

坂本鉄男 イタリア便り 片道切符の死出の旅


 なにかにつけて「自由、自由」と叫ぶくせに、「安楽死」が認められていない国では人間には自殺以外に自由に死ぬ権利がない。しかも、自殺には非常な勇気が必要だし、その手段も悲惨なものが多い。

 去る2月に英国の有名テレビ司会者が友人を安楽死させたことを告白した事件が起きたとき、ローマの地元紙がジュネーブの「尊厳死施設」の紹介記事を載せた。

 この特殊な施設にはもちろん誰でも入所を許されるわけではなく、不治の病の患者でしかも審査委員会の審査を通過した者だけが入所できる。1998年以来、世界各国から来てこの施設で死んだ人は1千人以上でイタリア人も15人含まれるという。入所予約希望者は年々増加し、イタリアだけで現在1千人を超すらしい。

 3500ユーロ(約38万5千円)の入会費その他を払い、順番が来ると片道切符でジュネーブに赴き入所する。同伴者は後で自国で「自殺幇助(ほうじょ)罪」が適用される危険があるため注意を要するとのこと。

 さて、ベッドに横たわると吐き気止めの錠剤を1錠飲み、コップ1杯の水で少量の砂糖を混ぜた致死薬15グラムを服用する。数分後に安楽死し、枕元の医者が死亡を確認するという。

 がん患者増加と老齢化の進む社会にとって考えさせられるシステムである。

坂本鉄男
(12月5日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)