2011年7月31日

坂本鉄男 イタリア便り 別荘よりも海外旅行


 毎年6月になると、なじみの理髪店の主人が、この時期のお決まりの文句のように「夏休みは日本ですか」と尋ねてくる。

 ローマでは想像できない日本の夏の蒸し暑さなどを説明するのも面倒だから、こちらも主人が150キロ離れた山村に小さな家を持ち、そこで20日間の夏休みを過ごすのを知っているくせに、毎年同じように「あなたはどこに行くの」と聞き返す。

 イタリア人は海や山に、別荘を持つのが好きだ。多くは小さなマンションで、全国の総数3200万軒の個人住宅のうち300万軒以上がバカンス用の家だといわれてきた。今も、海辺や山間のリゾート地には住宅の建設が続いている。

 お金持ちは隣国のモナコやフランスに住宅を持つのがはやりだった。しかし、最近は、ドル安で住宅の値段が下がったことから、米国に住宅を購入するのもブームとなっている。

 これだけの数の別荘があるのだから、夏休みは、別荘で一家だんらんの時を過ごす家族が多い。だが、近ごろ、格安の航空路線ができ、高速道路網が発達したため、若者は、親が汗水流して手に入れ、子供のころから行き慣れた別荘に飽きて、海外旅行を楽しむ者が多くなっている。

 今に、イタリアの海と山には売り別荘があふれるに違いない。
坂本鉄男
(7月31日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2011年7月27日

プーリア便り43

Ciao dalla Puglia!

暑中お見舞い申し上げます! いかがお過ごしでしょうか? 大震災後、今もご不便な生活を強いられている方々にとって少しでも過ごしやすい気候であると良いのですが。

プーリアは7月以降、日中気温35度を越す猛暑日。でもこちらの人は日中の最も暑い時間帯は平日であればお昼休みを利用して体を休ませ、休日であれば暑さを逆に利用して海水浴を楽しむことが多いです。私も彼らに倣ってできるだけ冷房を使わずに夏を乗りきっています!

今回は、7月15日より、昨年同様ここマルティーナ・フランカで開催されている “イトリア谷 音楽祭(Festival della Valle d'Itria)” の話題です(昨年の様子は “プーリア便り28” をご参照ください)。既に町の至る所にポスターが貼られ、日暮れ後に会場のある歴史的市街区を歩けばどこからともなくリハーサルや本番の音色が聞こえ、町はフェスティバル一色。私もリハーサルを見学させていただいたり、演目を調べてチケットを予約したりと、どっぷりその中に浸かってワクワクしています。

一昨年から通い続ける中で感じるこの音楽祭の特徴は、一言で言えば “演目、演奏者、観客にチャレンジがある、そして広く門戸を開いている” ことだと思います。どういうことかと申しますと…、

演目 :コテコテのメジャー作品は取り上げず、有名作家でもあまり世に出ていない作品を取り上げたり、前衛作品や実験的作品を取り上げ ることも。例えば今年の演目ではロッシーニの “AURELIANO IN PALMIRA(パルミーラのアウレリアーノ)”  、字幕スクリーン付き独語上演作品 “DER RING DES POLYKRATES(ポリュクラテスの指輪)” や “DAS GEHEIME KONIGREICH(秘密の王国)” 等。
演奏者 :若手が多く登場します。例えばリハーサルを拝見した “AURELIANO IN PALMIRA” の指揮者はどう見積もってもせいぜい30代。ただ登壇時や演奏前後の挨拶等は “初々しいな~” と思わせることはあっても演奏は当然プロフェッショナルで堂々としており、未熟さは微塵も感じさせません。
観客 :上記のような演目・演奏者ですから、主催側はもちろんですが観客側もチャレンジングな面があります。数年前のとある演目の際はあまりに前衛的過ぎたのか観客席からブーイング&離席者が続出し、終わる頃には半数以下になっていたこともあったそう。でも今は主催側もその辺りを十分考慮しているようで、少なくとも私が鑑賞し始めた一昨年以降、そのようなことは起こっていません。

いずれも夏の野外で行われるので、ドレスコードも緩く、チケット価格も無料~最高でも50ユーロと全体的にとても参加しやすい音楽祭です。

こちらは23日に聖マルティーノ聖堂で行われたロッシーニの小荘厳ミサ曲終了後の写真です。

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専門的な音響云々について言えば教会はNGなのかもしれませんが、歌声や演奏が厳かに響き渡り、途中で何度か教会の鐘の音も混じり…、この演目にはこれ以上ないくらいぴったりの雰囲気の中で行われたすばらしい音楽会でした。しかも満員の中、一度たりとも携帯電話の音やおしゃべりに悩まされること無く、休憩なしの1時間半の音楽会が終了したのはイタリアでは珍事と言ってよいかも(笑)。それだけ内容にみんな聞き惚れていたということです。おまけにこの会は無料…。いち地方都市にてこんなにすばらしい音楽会を無料開催することに芸術を愛するイタリア人魂を感じます。

今年は8月2日まで行われる “イトリア谷 音楽祭” 。弊社 “プーリアインカミング” ではサービスのいずれかをご予約いただいたお客様で鑑賞ご希望の場合、手数料無料サービスでチケット予約を代行しております。詳細は弊社HPをご覧ください。このサービスは来年以降も続ける予定ですので「興味はあるけど今回は無理…」というかたはぜひぜひ今から来年の予定に加えてくださいね。この時期は近辺のお宿も早い段階から満室となりますのでご計画はお早めに!

皆様、良い夏をお過ごしください!
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2011年7月24日

坂本鉄男 イタリア便り 美術品捜査のプロ


 イタリアには内務省所属の「国家警察」のほかに組織も総司令官以下の階級も軍と同じ国防省警察(カラビニエリ)がある。重大犯罪や組織的犯罪を扱うほか、海外に不正流出した美術品・考古学的文化財を調べる特殊捜査部門も持っている。

 さて、この部門のある下士官が夏休みで米ニューヨークを散歩中、骨董(こっとう)店に陳列されていたローマ時代の大理石胸像に目を引き寄せられ、直感的に携帯電話で撮影した。

 これがきっかけで、1988年夏にローマとナポリの中間点にあるテッラチーナの考古学博物館から盗まれた紀元1世紀の大理石像が取り戻されたが、こうした成果は、ほんの一例にすぎない。

 イタリアは美術品密売の犯罪組織にとって最大の商品入手先である。去る3月中旬、30年にわたる交渉の末、アメリカのポール・ゲティ美術館からシチリアに返還された紀元前5世紀の石像「モルガンティーナのビーナス」は典型例だ。

 70年代末にシチリアで盗掘されたばかりの彫像をスイスの美術品故買専門家が安値で買い、ロンドンで50万ドル(約3900万円)で売りさばいた。さらにこの名品をゲティ美術館が目玉作品として1千万ドルで購入したのである。美術品の故買がいかにもうかるかの一例でもある。
坂本鉄男
(7月24日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2011年7月22日

フランコ・ラ・チェクラ著『反建築』翻訳出版記念シンポジウム

レンツォ・ピアノ事務所の顧問も務め、建築が社会へ及ぼす影響力についても長年研究してきたラ・チェクラ氏の著書『反建築』(原題Contro l'architettura)の翻訳出版を記念してシンポジウムを開催します。ラ・チェクラ氏の講演の後、建築家の隈研吾氏、ヴェネツィア建築大学教授ジョルジョ・ジャニギャン氏が加わり、パネルディスカッションが行われます。モデレーターは陣内秀信法政大学教授です。

共催:イタリア文化会館、公益財団法人日伊協会
日時:9月30日(金)、18:00~
場所:イタリア文化会館アニェッリホール
参加費:無料
お申し込み:eventi.iictokyo@esteri.it (要予約)
お問合せ:イタリア文化会館 03-3264-6011 (EX.13,14)

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会員限定優待チケットのご案内

「セビリャの理髪師」 藤原歌劇団オペラ公演のお知らせ

ご好評をいただいている、ロッシニーシリーズ第7弾は人気作品の「セビリャの理髪師」。巨匠アルベルト・ゼッタの指揮と世界に冠たるロッシニーテノールファン垂涎の的、A.シラグーザ。ロジーナは藤原歌劇団のプリマドンナ高橋薫子。舞台は,手堅い演出で定評のある松本重孝によるニュープロダクションです。ぜひ、藤原オペラをお楽しみください。

公演日:9月9日(金)、18:30~
場所:新国立劇場オペラハウス
チケット:日伊協会会員 特別席 18,000円 → 16,000円
                    A席  15,000円 → 13,000円
お申し込み:日本オペラ振興会チケットセンター (平日 10:00~17:00)
             044-959-5067
             ※お申し込み時に、必ず会員番号をお伝えください。
締切:8月25日(木)

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2011年7月21日

『クロナカ』130号発行


日伊協会会報『クロナカ』2011年夏号(通巻130号)ができあがりました。
まもなく、会員のみなさまのお手許に届くと思います。

 今回の特集は、「イタリアと日本、マンガが結ぶもの」。

110721cronaca130.jpg巻頭記事では、イタリアにおけるマンガの歴史、イタリアでの日本マンガの評価から、イタリアの若者たちの日本に対する意識、外交の手段としてのマンガの役割を論じています。
1980年代に興ったイタリアの「新マンガ運動」については、日本ではあまり知られておらず、非常に貴重な資料となると思います。

続いて、古代ローマと現代日本の入浴文化を取り上げて大評判のマンガ『テルマエ・ロマエ』の作者ヤマザキマリさんへのインタビュー。

さらに、今やマンガが主役となった「ボローニャ・ブックフェア」のレポートがあります。

今号からの新連載として、BS日テレ『小さな村の物語 イタリア』のプロデューサー/ディレクターである田口和博氏のエッセイ「小さな村の大きな人生」がはじまりました。
「イタリアの小さな村で、取材班が出会った思い出深い人とのエピソードを毎号お送りします」(田口氏)

その第1回は、「美しい人生があるとすれば、それはきっと彼女のこと」。リグーリア州アプリカーレで取材班が出会ったジョヴァンナさんとの思い出が語られています。

日伊協会の会員以外で購入を希望される方には、1部300円でお分けしています。
日伊協会のサイトの「出版物のご案内」ページから購入申込みができます。
また、電話でお申し込みの際は、「クロナカ2011年夏号(130号)」とご指定ください。
tel. 03-3402-1632 (日伊協会事務局)

<目次> (表紙を含めて全24ページ、数字はページ番号です)

●特集:イタリアと日本、マンガが結ぶもの
3 たこ焼きセットを買ったイタリア人
--アニメ・マンガが果たしてきた外交 山根緑
7 表紙でたどるイタリアのマンガ100年の歴史 山根緑
8 古代ローマと現代日本が舞台!
 人気のマンガ『テルマエ・ロマエ』の作者に聞く
10 イタリア文化喫茶室
 世界の児童書のプロが集まる見本市、
 ボローニャ・ブックフェアを訪ねて 今井佐智子

12 イタリア・ルネサンス絵画史入門<35> 松浦弘明
 1510年代のフィレンツェ絵画―アンドレア・デル・サルト―
14 小さな村の大きな人生<1> 田口和博
 美しい人生があるとすれば、それはきっと彼女のこと
16 EUのなかのイタリア モスカテッロ・リポート<38> アントニオ・モスカテッロ
 イタリアの政治は転換期のまっただなかに
18 イタリア語講座に行こう!
 見事全員合格!「実用イタリア語検定対策 4級」
20 イタリアのニュースから
22 恵贈図書
22 イタリアで見つけたあんなもの、こんなもの 長谷川嘉美
 キューブをポン!で本場の味「固形調味料」
23 日伊協会からのお知らせ
表紙 インペリア(リグーリア州)にて 二村高史

2011年7月20日

イタリア語書籍差し上げます

この度、日伊協会で所有しているイタリア語で書かれた書籍を諸事情により処分することにいたしました(201号室「石川記念ルーム」で公開している書籍については、そのまま公開を続けます)。
なかには貴重な資料もございますので、処分する前にご希望の会員の皆様に無料で差し上げます。
ついては下記の通り公開日を設けて展示しますので、この機会にぜひお立ち寄りください。

公開日:8月30日(火)~9月1日(木)、10:30~17:00
      9月2日(金)、10:30~16:00
場所:赤坂7-2-17-201 日伊協会・石川記念ルーム

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2011年7月17日

坂本鉄男 イタリア便り ウナギの長旅


 今年は7月21日が「土用の丑の日」。イタリアにもウナギ料理はあるものの、日本人の舌には「かば焼き」が最高である。

 イタリアのウナギの主要産地は、アドリア海に注ぐ北部ポー川下流域のコマッキオが有名だが、ウナギの漁獲高は年々減り続け、30年前の年間20万トンに比べ、現在はその10分の1にまで激減しているという。

 また、この地方でも日本と同じように天然ウナギは少なく養殖ウナギに頼っているのが現状だ。稚魚の乱獲により、その養殖も困難になっているという。

 日本と欧州のウナギは産卵地域と幼魚の成育地域が全く異なる。日本ウナギの産卵場所はマリアナ諸島の西側と推定されている。一方、イタリアの天然ウナギは、ポー川下流域で6、7年ほど生息し、約1・5キロの大きさに成長してから産卵のために1年ほどかけて、数千キロの長旅に出かける。

 まず、地中海を泳ぎジブラルタル海峡を抜け、大西洋を横断。北米大陸のサルガッソ海にまで到達し、アメリカやヨーロッパ各地の河川から来たウナギと同様に深海で産卵する。

 イタリアのウナギはそこの海域で稚魚に育つと、再び親の故郷ポー川をめざし、また長旅を始めるわけだ。かば焼きを食べるときにウナギ親子2代の長旅を思い出すのも一興だろう。
坂本鉄男
(7月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2011年7月10日

坂本鉄男 イタリア便り 原発先進国だった過去


 イタリアが過去20年余にわたり、先進国中数少ない原発非稼働国であるという理由で、原子力エネルギー利用の“後進国”と思う人がいるから困る。むしろ原発先進国だったからこそ、最初に原発から手を引いたのである。実際、1966年には3基の原発を保有し、国内電力需要の3~4%をカバーする国として米英に次ぐ3番目の原発先進国であった。また、70年と82年には、4基目と5基目の原発建設が開始されていた。

 ところが、79年に米国でスリーマイル島の原発事故が起こり、86年には旧ソ連でチェルノブイリ原発事故が発生した。イタリアはこの事故を教訓に87年の国民投票で「脱原発」に踏み切ったわけだ。

 だが、脱原発により、国民はEU内で一番高い電気料金を負担することになり、国際競争力の低下を恐れた産業界から、原発再建の強い要望があったため、ベルルスコーニ内閣が原発再建を計画したのである。

 6月の国民投票では、福島第1原発事故が世論に大きな影響を与え、「脱原発」は再確認された。だが、15年ぶりに国民投票が成立したのは、投票者の多くが「原発」よりも、投票項目の「水道事業の民営化案」と「それに伴う料金の改定認可案」への反対投票に赴いたためであることを知るべきである。
坂本鉄男
(7月10日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)

2011年7月 7日

日伊協会会員はICCJイベントも会員価格!

この度、日伊協会はイタリア商工会議所(ICCJ)のメンバーになりました。
これからは、日伊協会会員の方も ICCJ で開催されるイベントに ICCJ 会員価格でご参加いただけるようになりました。
ぜひこの機会に、日伊協会のイベント同様、ICCJのイベントもご利用ください。

イベントの内容、お申し込みつきましては、ICCJ ホームページでご確認ください。

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2011年7月 3日

坂本鉄男 イタリア便り マティーニ1世紀


 1911年にニューヨークのあるバーテンダーが作り出したと伝えられる食前用カクテルの代表「マティーニ」は、ついに1世紀の歴史を迎えた。

 イタリアではカクテル材料の一つのベルモットを製造する「マルティーニ・エ・ロッシ社」の発音どおりに「マルティーニ」と呼ぶ。一時流行がすたれたが、最近、再びはやり出したのは、作り方も簡単、味もシンプルな点が好まれるからであろう。

 このカクテルは、イタリアではドライ・ジン8の割合に対し、ベルモット・マルティーニ・ドライ2が基準といわれるが、飲み物は個人の嗜好(しこう)が一番大切だけに、この基準にこだわる必要はない。英国のチャーチル元首相は、ベルモットはほんの香り程度で、大部分がジンのものを飲んだことで有名だ。

 準備の段階でも材料をカクテル用氷と一緒にミキシンググラスで攪拌(かくはん)し、カクテルグラスに注ぎ、緑のオリーブを1個入れるのが正式とされるが、これも映画007シリーズでジェームス・ボンドが注文したように、シェーカーでシェイクしても邪道だろうが構わない。

 飲む時間は1940年代末のカクテル通の米国人作家が「絶対にバイオレット・アワー」、つまり「宵闇迫る頃」と言っていた。こよいは食前に一杯いかがですか。
坂本鉄男
(7月3日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)