新連載ブログ 「Tutte le strade portano a Roma(すべての道はローマに通ず)」
第一回「収穫の秋」 

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今年開催されたミラノ国際博覧会。「地球に食料を、生命にエネルギーを(Feeding The Planet, Energy For Life)」というテーマで、世界各国のパビリオンでは食に関する様々な展示やプレゼンテーションが行われました。本ホームページではそれを先取りし、一年前からカウントダウンする形で「ミラノの街角から」というブログを連載していました。その博覧会も10月末には閉幕されます。

そして2015年秋、日伊協会のホームページに新しいブログが開始されます。

新連載ブログは「Tutte le strade portano a Roma(すべての道はローマに通ず)」。「永遠の都」ローマ在住の日本人の方(ブログの最後でプロフィール掲載しています)にローマ特派員として、現地で生活している日本人の方ならではの視点で、ローマより愛をこめて、イタリアに関する様々な話題を届けてもらいます。これからお楽しみに。第一回目はローマの秋らしい話題です。

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長く続いた夏が終わり、ようやくローマにも秋がやって来た。とはいっても住宅地を歩くと、まだまだベランダで今年最後の太陽を楽しもうとする住民の日光浴姿を目にする。中には寒くないのか、はたまた痩せ我慢なのか、水着でデッキチェアの上に横たわるご婦人もおり、ヨーロッパ人の太陽への執着にいつも感嘆するばかりである。

イタリアの今年の猛暑はそれはすざまじく、6月下旬には一時、ローマの街角から扇風機が売り切れてしまうという騒ぎが起きた程だった。オスティアなどのローマ近郊の海も海水浴客の出が昨年の30%増しとなり、平日の月曜日の午前中にもかかわらず市内からオスティア、フィウミチーノ、フレジェーネ、マッカレーゼ方面へ抜ける道沿いに渋滞が出来ていた。

あまりの暑さにローマっ子達もローマの海へ押し掛けた訳だが、いつもより人でいっぱいの海に嫌気がさし、サルデーニャ島の海などへ逃避する人々も出て来る始末であった。

サルデーニャ島の溜息が出るような美しい海への逃避行も十分羨望に値するのだが、筆者にとっては、月曜日の朝から堂々と海に行けるイタリア社会の懐の広さを羨ましいと言わざるを得なかった。

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写真1:ローマ近郊のサンタ・セヴェーラ(Santa Severa)の海。

さて、一般的にイタリア人が”秋”と聞いて何を一番に想像するかというと、やはりヴェンデミア(Vendemmia)だろう。ヴェンデミア(Vendemmia)とはイタリア語で”ブドウの収穫”を意味する。筆者の周りのイタリア人も「秋はブドウの収穫の季節である。 L’autunno e la stagione della vendemmia.」と皆口を揃えて答えてくれた。日本ならば、”食欲の秋”とか”読書の秋”、”スポーツの秋”などとそれぞれ違ったものになりそうだ。

Vendemmiaの単語の語源はラテン語のVinum(Vino ワイン)+ Demere(Levare、Raccogliere 収穫する)から来ている。秋という季節にはおいしい食べ物があることは万国共通かもしれない、と思う。

ローマ市内に、このヴェンデミアを主題にしたローマ時代(350年頃)の貴重なモザイクが残る場所がある。ローマ中央駅テルミ二駅から90番などのバスで約10分、ノメンターナ通り沿いにあるサンタ・コスタンツァの廟(Mausoleo di Santa Costanza)である。廟(墓)の内部の天井部分には、精巧なモザイクが当時のままにびっしり残るのだが、特にブドウ狩りからブドウ酒(ワイン)を作るシーンがかわいらしいので目を引く。

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写真2~3:サンタ・コスタンツァの廟。すぐ隣には7世紀に建て直されたサンタニェーゼ・フォーリ・レ・ムーラ教会がある。教会の地下にあるカタコンベの見学もお奨め。

聖コスタンツァは、ローマ帝国皇帝でキリスト教を公認したコンスタンティヌス1世(在位:306-337)の娘であり、廟は皇帝が娘の依頼を受け建てたものである。このヴェンデミアのシーンは多くの場合、秋を表現したい時の装飾に使う、俳句でいう季語のようなものであるが、ここはプライベートなお墓なので、アレゴリー(寓意)的な解釈の仕方が妥当であろう。

ブドウを収穫し、潰すとブドウ酒となる。真っ赤なワインはイエス・キリストが流した血、犠牲の血を表しているのであろう。キリストは人類を救済する為に十字架に架けられるが、再生(復活)する。よって復活をも意味しているのではあるまいか。ちなみにコスタンツァはこの”ヴェンデミア”を自分の棺の装飾にも選んでいる。(ヴァティカン博物館蔵)

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写真4:天井の装飾は非常に目の細かいモザイクで出来ている。写真5~6:ヴェンデミアを主題にしたパネル。男性が牛車に収穫したブドウを乗せてやって来るところや、ブドウを潰すシーンが見える。

小さな天使、花、果物、動物などによる調和のとれたデザインが美しい古代のモザイク。是非訪れてみたい場所の一つである。

こうして誰でも簡単に、歴史に、そして本物に触れることのできる国イタリアは、世界でもとても稀有な国だと思う。皆さんがご存知の通りイタリアは、世界一の数のユネスコ世界遺産保有国である。今やヨーロッパでも「美術史」を義務教育の必須科目にしている国はイタリアだけで、フランスの最近の若者に至っては、聖書や神話などの知識も教わらなければほとんど理解できないという。

その国の言葉、歴史や文化を知ると旅がもっと楽しくなる。日伊協会でも優れたイベント・セミナー、文化講座を開催しているので、今年の”収穫の秋”には何か新しいことを始めてみるのはいかがだろうか。

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Abe
阿部美寿穂

【略歴】
神奈川県出身。日本では園芸学を学んだ後、公的機関で企画・広報に6年間携わる。ローマ県公認観光通訳。ローマ大学文学哲学部卒。文化遺産学西洋美術史専攻。地球の歩き方 ローマ特派員、たびねすイタリア旅行ナビゲーター。ホテル(ローマ)のコンサルタントなどとしても、フリーランスで多方面で活動中。ツイッターにてイタリア旅行のヒント、イタリアの日常生活などを毎日発信。

イタリア便り 阿部美寿穂 @RomaMizuho
地球の歩き方 ローマ特派員(Web版)    http://tokuhain.arukikata.co.jp/rome/
たびねす イタリア旅行ナビゲーター     http://guide.travel.co.jp/navigtr/545/