新連載ブログ「イタリアに生きる(第1回)」

朝夕冷え込む毎日が続いていますが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。

今年の8月上旬、ローマ・パンテオン神殿における「広島・長崎原爆投下式典」に関して報告記事を執筆しました、大髙志歩と申します。ローマ・サピエンツァ大学で東洋言語文化を専攻する傍らイタリア人有志と日伊文化協会「いっぽん協会」を立ち上げ、日本の伝統行事を中心にイタリアでは知られていない日本文化の様々な側面を、イベント企画やインターネットを通して発信しています。

今回と次回に続く2本の記事では、イタリアにおける日本語・日本文化教育現場の一例として私の通う「ローマ・サピエンツァ大学東洋言語文化学科」を紹介しつつ、イタリア人の大学生活を少し覗いてみたいと思います!

2016年から東洋言語学科が移された新学部棟「マルコ・ポーロ」。郵便局の物流倉庫として使用されていたことから、「Ex-poste(「旧郵便局」)」の愛称で親しまれる

【430年の歩み】文学部のみで17000人の生徒・約400名の教員(2017年時点)を抱えるサピエンツァ大学には、イタリアにおける数少ない東洋言語文化教育機関である東洋言語文化学科(Istituto Italiano di Studi Orientali)が存在します。

当大学におけるアジア言語教育の歴史は非常に古く、430年の歴史の根拠はアラビア語コースの創設された1575年にまで遡ります。その後イスラム文化、インド文化、東アジア文化と幅を広げたアジア文化研究は、1994年に「東洋言語文化学部」の創設と共に大きな節目を迎え、現在に至ります。

【9カ国語を選べる環境】三年課程の大学生活の中で、学生たちは日本語・中国語・韓国語・ヒンディー語・アラビア語・サンスクリット語・チベット語・ベンガル語・ペルシャ語の中から第一専攻言語と第二専攻言語を選び言語運用能力を身につけるだけでなく、その言語圏における文化を歴史、美術、宗教を始めとした様々な知識を習得します。

第一言語に日本語を選択した生徒は日本語の多くの側面を学ぶ機会に恵まれ、20年アルファベットで生きてきたイタリア人が三年かけて1000字以上にもなる基礎漢字の書き方、音訓、関連熟語、文型を身につけ、芥川龍之介の短編小説を読める程までに成長する様にはいつも驚かされます。

学生のノート例。3年間かけて学ぶ漢字は「読む漢字」と
「書く漢字」に分けられ、短時間で体系的に学ぶ
ことができるように組まれる

【授業への出席は自由!自動進級の仕組み】日本の大学と比べで最も異なるのは、進級の仕組みだと感じています。サピエンツァ大学は一年目に取得すべき単位数はあるものの義務ではなく、試験を受けるタイミングを自分で選ぶことができます。

そのため、ほぼ全ての試験を終わらせて卒業間近の学生がまだ一年目の試験科目を勉強している姿を見かけることも。授業への出席すら自由で学生の自主性を尊重するイタリアならではの光景ではないでしょうか。

【実質授業期間は6カ月?】授業は二期制で、試験の単位数に応じて一期で終わるものや二期かけて学ぶ科目があります。10月から翌年1月末までの一学期、2月末から6月初めまでの二学期を合わせると、教授による授業があるのは実質6ヶ月ほどのみで、残りの6カ月は自らの試験の組み方に応じてほぼ「休暇返上」で勉学に励んでいます。

*以下、第一言語に日本語、第二言語に中国語を専攻する学生の試験科目例。カッコ内の数字はコースに割り当てられた単位数を指し、1単位あたり25時間の学習時間(授業時間を含む)を想定。

日本の一般の大学に比べると、科目数が少ない分、一つ一つの試験へ割り当てられる単位比重が大きいことがわかります。「選択科目」では、自分のシラバス外のコースを自由選択にて単位を取得することができます。

●第一学年(54単位)
>日本語(12)英語(12)一般言語学(6)歴史言語学(6)東洋美術史(6)東アジア史(6)選択科目(6)
●第二学年(62単位)
>日本語(12)中国語(12)日本文学史(6)日本現代史(6)アジア宗教史(6)歴史言語学(6)情報処理(8)選択科目(6)
●第三学年(58単位)
>日本語(12)日本語文献学(6)英語文学(6)現代言語教育法(6)比較言語学(6)インターンシップ&セミナー(8)選択科目(6)修士論文(8)

学部棟2階廊下


【お財布に優しい大学授業料】大学に正規登録する学生は、家庭の所得に応じて国から授業料が控除されます。所得が年1万ユーロ以下の場合は授業料が全額免除され、州へ納める2万円ほどの税金を納めるのみで一年を通して大学の授業、試験を受けることができるだけでなく、図書館や食堂を始めとした全てのサービスを同様に利用することができます。

また、ラッツィオ州が交付する返済無用の奨学金制度を利用することもあります。ローマ以外の出身の学生が多く、親元を離れ寮生活しつつ、時には仕事を掛け持ちしながら大学に通う学生達にとって、授業料免除や奨学金制度は大きな支えになっています。

次回記事では科目ごとの具体的な内容にも触れつつ、イタリア人大学生の一日に密着したいと思います!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

大髙志歩