坂本鉄男 イタリア便り ワクチンのバーゲン

 昨年3月末にメキシコで新型インフルエンザの発生が最初に報告されて以来、世界保健機関(WHO)の大流行警告もあって、各国ともワクチンの手当てに奔走した。昨年末までの全世界の死者は1万3000人弱で、感染拡大のペースは減速しているという。

 イタリアでは、新型インフルエンザによるこれまでの患者は400万人と多いが、死者は200人足らずと予想をはるかに下回っている。こうなると、峠を越えた今になってはワクチン接種を受ける人も激減し、政府がせっかく2400万人分のワクチンを買い集めたのに、約80万人が接種を受けたに過ぎない。

 こうした状況は他の欧州連合(EU)諸国でも同じだ。

 フランスでは9400万人分のワクチンを購入したが500万人分しか使われておらず、5000万人分を購入したドイツでは国民の5%強しか接種を受けていないという。

 原因はワクチンの準備が遅かったためである。まだまだ、流行が再燃するかもしれないし、ワクチンの有効期限は1年間であるにもかかわらず、各国とも購入代金を少しでも取り戻すため、発展途上国へのバーゲンセールも考えているらしい。

 「ワクチンの用意は流行のピーク前までに」という教訓を与えたようだ。

坂本鉄男
(1月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)