La temperanza è la madre della sanità 節制は健康の母

 

こんにちは。例年になく温かい秋ですが、皆さん元気にお過ごしですか?ハロウィーンをテーマに彩られた町にはカボチャや栗など旬の野菜が並び始め、ワインやオリーブオイルの初物が待ち遠しい季節になりました。秋は、文化、運動、行楽と何をするにも気持ちのいい時季ですが、食欲も一段と旺盛になってきます!今月のお便りはtemperanza(節制)の美徳を取り上げたいと思います。

 

節制の美徳temperanzaは、古くから西洋で重要な徳目とされてきました。本年度のテーマ、アンブロージョ・ロレンツェッティのフレスコ画『Allegoria del Buon Governo(善政の寓意)』中でも、擬人化されたTemperanzaが四元徳の一つとしてGiustizia(正義)、Prudenza(賢明)、Fortezza(剛毅)とともに描かれています。女性の姿をしたTemperanzaは手に砂時計を持ち、知恵をつかってバランスよく時間を使うよう人々に諭しています。思慮によって衝動を抑えて自らを律し、自然の欲求や必要をバランスよく満たしながら暮らすことで、健全な思考や調和が生まれると教えています。

イタリア語のtemperanzaは、ラテン語のtemperantia(節制)から生まれた言葉です。語源をさらに遡ると、ラテン語tempus(時間)から動詞temperare(控える)が派生し、その現在分詞から名詞temperantiaが生まれています。もともとtemperareには「混ぜて正しい割合にする」という意味があり、特に古代ローマの風習であった「ワインに水を混ぜてちょうどよい強さにする」ことを表していました。タロットカードや芸術作品の中では、水差しや瓶や杯を手に持ち、温かい水と冷たい水、ワインと水を混ぜているTemperanzaの姿がよく見られます。
動詞temperareには、ほかにも「毒を調合する」、「色を薄める」といった使い方がありました。そこから、絵画技法のtempera(テンペラ)という言葉も生まれています。例えば、una parete affrescata a temperaは「テンペラ技法で描かれたフレスコ装飾の壁」と技法を意味し、una tempera di Leonardoは「レオナルド作のテンペラ画」と作品自体を意味します。

 

 

 

 

 

イタリアの多くのことわざもtemperanzaの大切さを伝えています。La temperanza allunga la vita(節制は長生きのもと)、La temperanza è la madre della sanità(節制は健康の母)、La temperanza è la miglior medicina(節制は最良の薬)、La temperanza è la salute dell’anima e del corpo(節制は心と体の健康)などがあり、temperanzaが心身を健やかに保つ秘訣とされてきたことが窺えます。
昭憲皇太后は、「春の花 もみぢの秋の さかづきも / ほどほどにこそ くままほしけれ」と、節制を題に和歌を詠まれたそうです。

腹八分目に医者いらず、天高く馬肥ゆる季節もしっかりとtemperanzaの美徳を胸に刻み(!?)、心も体も健康的に秋の味覚を嗜みたいものです。

ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲