2015年日伊協会 連続文化セミナー 『古代ローマの皇帝たちとそのイメージ』
第1回「首都ローマのモニュメントから見るローマ皇帝のイメージ」ご報告

2015年日伊協会 連続文化セミナー 『古代ローマの皇帝たちとそのイメージ』の第1回として3月6日(金)「 首都ローマのモニュメントから見るローマ皇帝のイメージ」が開催されました。参加者は30名弱でした。

第1回 首都ローマのモニュメントから見るローマ皇帝のイメージ

201503-3古代ローマでは、モニュメント、彫像、碑文などを通じて、皇帝たちは自らのイメージを人々に伝えていました。現在でも、彼らが残した記録物は地中海やヨーロッパ各地で目にすることができます。ローマ皇帝たちは、これらの記録物を通じてどのようなイメージを伝えようとしたのでしょうか。また、皇帝のイメージはどのように利用されたのでしょうか。この全5回の連続セミナーでは「イメージ」を手がかりとして、歴史や美術など様々な立場から古代ローマの皇帝たちの姿を紹介していただきます。

 
ローマ帝国の首都であったローマには、現在でも皇帝たちのモニュメントが多数残されています。
第1回のセミナーでは、この連続セミナーを総合的に企画調整していただいた福山先生から、まずこの連続セミナーの導入として、そして総論として、古代ローマの皇帝たちがこれらのモニュメントを通じて、どのように皇帝のイメージを作っていったのかが語っていただきました。
アウグストゥス霊廟やハドリアヌス霊廟のような埋葬施設、勝利を記念する凱旋門、記念柱、皇帝たちを描いたレリーフは、偉大な皇帝たちを讃えるものであるだけではなく、様々な思惑を反映したものでもありました。

まず帝位継承を円滑に進めるための「皇帝」家のイメージの強調として多くのモニュメントが作られました。次に皇帝とその家族の神格化が行われました。皇帝の死後に元老院によって神格化決議が行われ、死去した皇帝は国家の神の1人となり、帝国各地で神殿の建設も行われました。

roma1-p2逆に神格化されなかった皇帝は、「記憶の断罪」(ダムナティオ・メモリアエ 人物の公的な記録・記憶を消す処分)に処せられました。皇帝の名前やイメージは公的な碑文や建築物から撤去されました。
またローマには、アウグストゥスのように賞賛される皇帝たちだけではなく、ネロやドミティアヌスのように「悪しき皇帝」とされた人々もいました。ネロは断罪と名誉回復が入れ替わりなされましたが、現代に至るまでに「ローマの大火」や「キリスト教の迫害」との関連で淫蕩残虐な「悪帝」としてのイメージネロのイメージが固まっています。

現代の遺跡の状態から古代ローマの光景まで変化するCG画を交えて紹介しながら、政治指導者としての、最高神祇官としての、商業活動を支え物資や娯楽を提供する『国家の父』としての、そしてローマ軍の最高司令官としての皇帝を象徴するローマ市内の主な古代遺跡を紹介していただきました。

今後月1回、5回にわたり古代ローマの皇帝のイメージを巡ってセミナーが開催されます。皆様の多数のご参加をお待ちしております。

roma1-p1講師紹介:
■福山佑子(早稲田大学ヨーロッパ文明史研究所招聘研究員)早稲田大学ヨーロッパ文明史研究所招聘研究員、早稲田大学文学部・文化構想学部非常勤講師。早稲田大学大学院文学研究科人文科学専攻西洋史学コース博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学文化構想学部助手を経て現職。専門は古代ローマ史。ローマ皇帝の記憶と記録について研究している。