「イタリアマンドリン通信」 CD録音、コンサート、ゲネプロ、ハイキング、ミラノツァー

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<演奏CD録音>

私がブレーシャの街で所属するアンサンブル「Armonie in Pizzico」が、CD作成用の録音をすることになりました。曲目は5曲。メンバーが減ったのでちょっと不安であり、マンドリンパートは2名なので、演奏には正確さと音量の安定さが求められます。コンサートとは違う緊張感がありました。場所はある小さなホール風の舞台でした。スタジオのように防音設備がないので、周囲の異音(犬の鳴き声、人の笑い声、車の音等)が時折入るので、ちょっと録音が上手く行くのか心配でした。

2回演奏し、不安定な箇所を弾き直し、後で編集してもらうというスタイルでした。各パートからも意見が出て、どういう進行とつなぎが良いかなど、細かいことを決めつつ、実質約2時間位で終了しました。ヘッドフォンで部分的に聴いてみましたが、実際の自分のパートの音が想像とは異なる音質や音量であり、今まで気づかなかった点も多く、こういう機会はとても重要で、今後の演奏スタイルを修正する必要を感じました。果たしてどのようなCDが出来るかが楽しみです。

<ブレーシャのコンサート>

今回のブレーシャのコンサートは、中心地からやや郊外の町の小さなホールでした。ミラノオケの友人が、明くる日に西山さんとのレッスンがあり、前日のこのコンサートに聴きに来たいと希望があり、ミラノから一緒にブレーシャに同行しました。

会場は客席の傾斜が有り過ぎ、また舞台と一番前の席に空間がないため音が下に行ってしまい、前列と中央は音が聞えないことが、リハーサルをすると判明しました。事前のリハでの確認がとても重要です。特に私達のグループは人数が少ないので、配置の工夫が必要でした。

我々のグループの友人達、特に若いギタリストの家が近いため、多くの聴衆が彼の友人・家族・親類であり、とてもアットホームな雰囲気で、打ち解けた肩の凝らないコンサートとなりました。拍手も暖かく、私達もとても演奏し易かったです。

今回も前回に引き続き、オルガネット奏者との共演があり、タンゴの曲を披露しました。アンコールは、西山さんとオルガネットのシャンソン風の軽い楽しい曲、マンドリンオケは「La vita è bella」を演奏して、大拍手の中コンサートは無事終了しました。

コンサートのあとは、リンフレスコ(軽いお茶会)があり、主宰者と演奏者、内輪の友人達でワイン、ソフトドリンク、パニーノ、ケーキで、お互いの健闘と演奏終了の安堵感を感じつつ寛ぐことが出来ました。やはり舞台は緊張します。それが好きですが。

<クラッシックコンサート鑑賞>

友人からあるコンサートのゲネプロ(コンサートの公開リハーサル)のお誘いがありました。何でも彼女の同じアパートにクラッシク音楽大好きのイタリア人女性から始終お誘いがあるとか。私は日本でもゲネプロには行ったことがなかったので、とても楽しみでした。

約1,000人は入るであろう2階席もあるスフォルツァ城近くの大きなホールで、演奏はフルオーケストラと15歳でAbbado賞を受賞し、現在18歳の若手ヴァイオリニストでした。目玉は勿論彼のソロで、曲はパガニーニの「Concerto per violino e orchestra n.1」。

とてもハンサム(古い)なイタリア青年の見事な演奏に、観客(特に女性?)は魅了され、大歓声と大賛辞が送られました。やはり、ヴァイオリンはマンドリンよりテクニックの多さとその表現スタイル・見せ場が多く魅力的ですね。

オーケストラの演奏は、イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinskij)の「プルチネルラ(Pulcinella, suite dal balletto)」でした。これも、イタリアの道化師Pulcinellaをイメージした曲のようで、その曲想が分かり易く肩の凝らないクラッシック曲で楽しめるものでした。

このゲネプロのシステムは朝少し早めにホールに行き、チケットカウンターで空いてる席を選べて、たったの€8でした。勿論本番はもっと厳粛な雰囲気の正式なコンサートであるはずですが、気軽に楽しめるこのシステムは気に入りました。通常の料金は席の場所により異なりますが、€9~€20.00/回、定期券だと€107.5~€236.25/15回プラス前売り手数料のようでした。

ヴァイオリン以外に、共演としてソプラノ歌手・クラリネット・ピアノ・ピアノデュオ・チェロ・トロンボーン・テノール・バス歌手・合唱など、年間コンサートのプログラムはバラエティーに富んでおり、その予定表を見ながら楽しみが増えました。会場はシニア層が殆どで、日本と似ています。午前中に、コンサートを楽しめるのはこういう年代の方の特権ですね。

<イタリアのハイキング>

クラシックコンサートを誘ってくれた友人からハイキングが好きな方がいると聞いて紹介してもらい、早速その週末日曜日に同行しました。

あいにく曇り空でしたが、割りと暖かくハイキングには適した天候でした。もう一人若い女性の参加者と出発駅で落ち合い、普通電車で1.5hのAssoという駅に到着。幾つか手前から駅に降りる、ザックを担いだ少年少女やシニアのグループが見られ東京のワンデイハイク光景が、思い出されました。駅から徒歩で川沿いを歩き(東京の武蔵五日市に似ています)、スポーツ自転車での登りのイタリア人達が多く見られました。

その山には「蕨」が群生しており、今回も前夜の雨で湿った良いコンディションを期待しつつ、軽い登りからスタートしました。曇りの割には空気が澄んでおり、遠くの山並みは雪を頂いているのも含め美しく、清らかな空気と沢と久しぶりの自然に浮き浮きしました。

登山口から約1時間程のところに、アグリツーリズモ(Agriturismo:農園とレストラン併設)があり、今回の山行主宰者によると、自然栽培の食材で作られたランチは€25で、ちょっと登山の合間のランチには豪華すぎるので、今回は各自お弁当持参でした。

カフェの女性主人に3回も勧められた自家製チーズケーキ(絶品でした!)とレモンネードを外で頂き、山々の素晴らしい景色を見ながらゆっくりとお喋りしながら休憩しました。夏前ですから、新緑も素晴らしく、「この季節が一番良いね」と皆で意見が一致しました。

レストランの前には、なんと樹齢300年という栗の木があり、その季節には沢山の人々が栗拾いに訪れるそうです。是非来て見たいですね。休憩のあとは、一番の目的の「蕨採り」。その群生している場所を主宰者に教えてもらい各自蕨採り開始。もうなんか夢中になって探しては採りとそれぞれの場所を移動しつつ、沢山の収穫に全員が大満足。立派な蕨でした。そして楽しみの昼食タイム。山の中腹を更に登り、残雪のスイスの山々の眺望と新緑を楽しみながら、お弁当(勿論オニギリ)と手作りのお惣菜を頂きました。誰も居ませんでしたし、最高でした!

今回知り合った友人達とも意気投合し、また今後の山行計画を話しつつミラノに戻りました。主宰者は毎週このあたりにハイキングしているそうで、回数券を持ってました。東京近郊のハイキングと似ており、山道も整備されており、安全で安心して登れる山でした。また次回が楽しみです。

<ミラノ再発見ツアー>

毎月北イタリア日本人会主催の「ミラノ再発見ツアー」に久しぶりに参加しました。今回は「ミラノのゴールデンゾーン、モンテナポレオーネ界隈」のツアーでした。普段余り近づかない場所で、詳しい歴史やその謂れの知識は乏しいので是非知りたいと常々思っておりました。

出発地点は、地下鉄モンテナポレオーネ駅からVia Manzoniを歩いて、大きな門の一つPta Nuovaとの交差点のVia Spiegaから。この通りはローマ時代に運河が流れていたそうです。現在は交通量の多い通りで、環状道路になっています。この地域は、ミラノで最も上流社会の建物と昨今の著名人の住居が存在しているそうです。イタリア人ガイドの女性と皆で、徒歩で説明を聴きながら歩きました。廻りには当然観光客も多いですし、迷惑にならないように団体での移動は大変でした。

最初に裏道を歩きながらミラノで古い劇場に到着。バロック様式で建設されており、そのロビー正面にあるフレスコ画が見事でした。劇場内部には入れませんでしたがこの古い歴史ある劇場も、近年にショッピングセンターになる話があり、その通路にあったお店は既に移転しており、何とも寂しい景観でした。通路の建設様式もまだ残されており、芸術的にも素晴らしいのに、イタリアでも近代化の波が押し寄せていることを実感しました。反対する人も多数とか。是非まだ残しておいてほしい場所の一つです。

周辺の通りや、見つけにくい小さな路地には古き良き時代の残りが見られてその歴史を感じさせました。

モンテナポレオーネ通りから1本路地にある「Vottega Veneta」のお店の前に到着。バッグブランドで有名ですが、ここは家具製品のショールームとなっており、数人なら兎も角、大勢の見学は無理であろうというガイドさんのお話しでしたが、なんと見学させてもらえることになりました。中はとてもエレガントで、さすがにイタリアブランドを感じさせるショールームでした。特に奥にある居間には、ローマ時代の見事なフレスコ画が描かれており、その雰囲気は日常を忘れさせる優雅な空間でした。ランプのコードもこのブランドの特徴である市松模様になっており、細やかな造りとセンスに圧倒されました。。。ため息の連続。

カッコイイ店員さん達はとても愛想よく親切で、我々がイタリア語を理解できることもあるのでしょうが、色々説明してくれ、こちらからも質問をしてかなり有意義な見学をすることが出来ました。

Via Sant Spirito に辿り着き、そこには「Casa Bagatti Valsecchi」の美術館とその家族の屋敷が通りを挟んで2つの建物がありました。1400~1500年の建設スタイルで建設されているそうです。特徴は建物は1800年でも、1400年代のものをはめ込んだ造りが見られてその調和を感じさせることを表現しているとのことでした。

ガイドさんが説明をしているときに、なんとそのBagatti家のご主人がたまたま出てこられ(我々の訪問を喜んでくださり)、ご本人より説明をして下さいました。この偶然の出会いにびっくりしました。

ミラノの古い建物の特徴は、表は地味ですが奥に美しい中庭があり、その昔画家のスタンダールがその美しさを語ったとか。確かにモンテナポレオーネ通りに面したファッションブランドの店も奥に中庭があり、入ると異なる次元を感じる空間でした。今までファッションブランドはもう興味も余裕もないのでこの辺りに来ることはなかったのですが、今回の再発見ツアーで新たな魅力を知り、時間があるときにゆっくり再確認したいと思っています。