オペラ観劇とイタリア語

こんにちは。シエナのダンテアリギエーリです。あっという間に年の瀬となり、オペラをテーマにお送りしてきた2018年度のブログも最終回となりました。

今回は、みなさんと一緒にオペラ観劇の流れをシミュレーションしながら、オペラ関連の単語や表現について見ていきたいと思います。日本でもイタリアでも、オペラ観劇に役立ててくださいね。

チケットを手に入れる

まずは、どんなオペラを観に行くのか、公演(spettacolo)を決めてチケット(biglietto)を手に入れましょう。
お目当てを見つける方法としては、演目(programma)、歌手(cantante/cantatrice)、作曲家(compositore)など、ポイントとなるキーワードを基準にしてオンライン検索するのが手軽です。また、日伊協会は毎年すばらしい本場のイタリアオペラ公演を案内しているので、オペラファンの方も、オペラ初心者の方も、これを見逃さない手はありません。

イタリア旅行中に現地の劇場(teatro)に行きたいという方は、出発前に劇場や正規のチケット取扱店のサイトなどからオンラインでチケットを買うのが便利。旅行の日程に合わせて、開演日や町を基準に選びましょう。現地で急に観たくなった場合は、チケット売り場(biglietteria)へ当日券を買いに行くのもありです。もちろん、席(posto)が残っているかどうかは運次第なので、確実に観たい公演は事前手配をおすすめします。

オンラインにしても、劇場付近にしても、誤って非正規の転売チケットを購入してしまわないよう十分注意しましょう。異常な高値であることが多く、劇場によってはチケット自体が本物であっても、販売経路に問題があった場合は入場を拒否されることがあります。

何を着ていくか?

多くの人にとってオペラ鑑賞は特別なイベント。では、どんな装いで劇場に行くのがいいのでしょうか?ドレスアップしすぎたり、カジュアルすぎたりと、周囲から浮いてしまうのは避けたいですよね。

劇場や舞台によってもドレスコードにばらつきがあるので絶対的な正解はありませんが、服装選びの1つの基準にできるのが、どのような席(posto)で鑑賞するのかという点。一般的なコンサートやお芝居と同じく、オペラの鑑賞席にもいくつかの種類があります。座席エリアによってお値段もいろいろ。驚くほど安い学生価格を設定している座席エリアを用意している劇場や公演もあります。ほとんどの観客は、どのような雰囲気で観たいのか、どんな目的で観たいのか、予算はどのくらいか、などを勘案して座席を選択しています。つまり、大まかな法則としては、座席エリアのお値段に比例して服装のフォーマル度も上がる、という暗黙のルールがあるのです。

正面席(platea)などの上席で鑑賞する場合は、場の雰囲気を壊さないようフォーマルな着こなしで。正面席を囲むようなボックス席(palco)は、基本的に下から順に格が上がっていきます。かなり上階にある桟敷(loggione, galleria)や学生向けのエリアなどカジュアルなお席なら、フォーマルである必要はありません。それでも、デニムやスニーカーはNG。カジュアルスマートくらいの小ぎれいな装いにするのがおすすめです。舞台(palcoscenico)から遠いお席の場合は、オペラグラス(binoccolo da teatro)も忘れずに持っていきましょう。

観劇の前にしておきたいこと

公演当日までに必ず準備しておきたいのは、ストーリー(trama)を予習しておくこと。メロディにのせて紡がれるセリフ(recitativo)は聞き取るのがとても難しいので、お話の内容を予め知っておくことは舞台を楽しむカギとなります。さらに、イタリア語に興味のある皆さんには、歌やセリフ(dialoghi)がすべて載っている台本、通称リブレット(libretto)をあらかじめ買って読み込んでおくのがおすすめです。

当日は開演時間ギリギリではなく、余裕をもって到着します。また、夜ご飯を食べる時間に当たることが多いので、観劇中にお腹が鳴らないよう事前に軽食を取っておきましょう。食べ過ぎると眠くなってしまうこともあるので、ほどほどに。

劇場に入ったら、まずはコートや必要のない荷物をクローク(guardaroba)へ預けます。パンフレットやリブレットを買って目を通したり、開演まで十分に余裕があれば、劇場内のレストランやバーでアペリティフを楽しんだりしてはいかがでしょうか?

開演時間の間際になって慌てることのないよう、少し早めに座席につきましょう。電話などの電子機器は音が鳴らないようにしておきます。そのうちにオーケストラ(orchestra)の楽器の音が聞こえ始め、場内の明かりが落ちて、指揮者(direttore/direttorice)が登場。いよいよ、舞台の幕(sipario)が開きます!

オペラ鑑賞

開演すると、主役(protagonista)や登場人物(personaggi)など様々な歌手が美しい衣装(costumi)をまとって舞台に現れます。ソプラノ(soprano)やテノール(tenore)といった歌手たちのアリア(aria)や、複数の声が重なるコーラス(cori)がストーリーを紡ぎ、劇が展開していきます。

拍手(applauso)をするタイミングは、基本的に場(scena)や幕(atto)が終わった時点で。加えて、すばらしい歌(canto)の後には、場が変わらなくても拍手喝さいが湧きます。国にもよりますが、心から賞賛を送りたいときには拍手だけでなく「ブラーボ(Bravo)!」の掛け声をかけるのが王道。本場イタリアでは、賞賛の対象が男性歌手(cantante)か女性歌手(cantatrice)か、一人の歌手か複数の歌手か、によって掛け声が若干変わってきます。

幕の合間にある休憩時間(intervallo)も楽しみましょう。ロビー(foyer)にも洗面所にもこれでもかというほど人が溢れかえりますが、席を立ってその雰囲気を味わうのは観劇の醍醐味の一つです。

幕が再び上がってお話が進み、クライマックスを迎えて、フィナーレ(finale)へ。お芝居が終わった後に幕が一度下りますが、再び歌手たちがカーテンコール(chiamata)に現れます。大成功の公演の場合は、観客はスタンディングオベーション。座席から立ち上がって拍手と「ブラービ(Bravi)!」の声を送ります。

魔法をかけたような特別な一夜はあっという間に終幕となります。けれど、劇場でのオペラ鑑賞という体験は、心の中で何度も幕を上げ、私たちの中で輝き続けてくれるはずです。

【イタリア語ワインポイントレッスン:オペラ関連の語彙】

*劇場の席の種類、いろいろ
オペラを観るには、どんな席がいいのでしょう?
配置を基準に、劇場にあるいろいろな種類の席をなんと呼ぶのか、見てみましょう。
oplatea:1階正面席
一番の上席で、舞台に近いほど良い席となります。エレガントな観客でいっぱい、まさに社交の場というべき華やかなエリアです。
opalco:1階や2階のボックス席。
舞台に対して正面に近いほど、地上階に近いほどいい席となります。舞台の脇に近づくにつれてお値段が下がりますが、角度によっては舞台の一部が見えない席もあります。
ologgione:3階以上のボックス席。
palcoに比べてお値段も下がるので、カジュアル度が上がります。場所によってはコストパフォーマンスがとてもいいので、とにかくオペラが好きで何度でも観たい!という劇場通いのオペララバーも多い席です。
ogalleria:天井桟敷
舞台からはかなり遠くなり、他の客席とは雰囲気がぐっと違うカジュアルな席です。劇場にもよりますが、舞台芸術を勉強する学生など、若い観客の割合が高い席です。

*オペラ歌手の呼び方、いろいろ
イタリア語は男性名詞と女性名詞があるので、「歌手」といっても2つの形があります。
o男性歌手 cantante
o女性歌手 cantatrice
オペラの場合は、ソプラノ(soparno)やバリトン(baritono)など声の音域によって歌手のことを呼びますが、後ろに形容詞を付けて、さらに細かく分けた呼び方があります。
oil tenore eroico:ヒーロー的な歌唱が際立つテノール
oil soprano lirico:叙情的な表現力のあるソプラノ
oil baritono cavaliere:騎士の精神を表現するようなバリトン、など
また、実力のある人気スター歌手はdivodivaと呼ばれて愛されています。特に女性スター歌手には、stellavedetteなどいろいろな呼び方があります。

【お知らせ】

ダンテ・アリギエーリ シエナでは、専門家による声楽やピアノの個人レッスンや、オペラの台本を読みこむオーダーメードのレッスンなど、オペラや音楽が好きな方にもぴったりの留学プランをご用意しています。興味のある方は、ぜひ日伊協会の留学サポートにお問い合わせください。

ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン玲