Santa pace! いい加減にしてよ!

paceこんにちは。お盆も過ぎ、記録的な猛暑の続いたこの夏もそろそろ終わりに近づいてきました。急に涼しくなってきましたが、皆さん元気にお過ごしでしょうか?残りわずかとなった今月は、原爆の日や終戦記念日、各地で開かれる平和記念式典と、多くの日本人が過去の戦争や平和について強く思いをはせる月でした。今回はpace(平和)という美徳をキーワードにお便りしたいと思います。

今年度のお便りのフレームになっている14世紀のフレスコ画『Allegoria del Buon Governo(善政の寓意)』。そこには、シエナ共和国発展のために必要なさまざまな美徳が描かれていました。西洋文明の伝統にのっとって宗教的、哲学的な徳が多く描かれる中、ひときわ大きな存在感を示していたのが世俗的な徳ともいえるpaceの擬人化された姿です。当時のシエナでは、不要な戦争は町の繁栄を脅かすものであると捉えられていました。前回のお便りでも触れたイタリアの諺「La pace e la concordia hanno edificate tutte le città(平和と調和がすべての町を築いた)」の通り、ロレンツェッティのフレスコ画は「平和あってこそ真の繁栄がある」と、paceの重要性を強調していました。

 

eireneイタリア語で平和を意味するpaceという単語は、古代インド=ヨーロッパ語に遡る古い語源を持ち、ラテン語のpax(平和)という単語を経て生まれました。paceと同じ語幹*pak-、 *pag-からは、「契約」を意味するpatttoという単語なども派生しています。大文字でPaceとすると、ギリシア神話の女神エイレーネーにあたる平和の女神を表します。

平和を意味するpaceには、たくさんの成句や使い方があります。例えば、少し昔に使われていた「Pace e bene」や「La pace sia con voi」という別れの挨拶。もともとは「平穏無事でありますように」という意味がありました。現在のイタリアで日常的な挨拶としては使われませんが、宗教関係者の間で交わされる挨拶や若者がふざけて大げさにする挨拶として耳にすることがあります。一方、ケンカ中によく聞こえてくるのは「Lasciami in pace!(もう放っておいてよ!)」、「Santa pace! (もうたくさんだ!)」といった表現。また、「Dammi mille yen e siamo pace(千円くれたらそれでチャラだ)」といったように、トランプなどのゲームの引き分けや、友達同士の貸し借りがない状態のことを表したりもします。

bandiera-paceさて、平和を訴えるデモや集会などでよく掲げられる7色の平和の旗をご存知ですか?現在世界中で使われているこの旗は、実は1960年代にイタリアで生まれました。イギリス発祥のピースマークの旗に影響を受けて作られたと言われ、虹の7色は神様が約束した平和の証や多様性を認める統一を象徴しているとされています。配色はゲイパレードなどで使われる虹の旗とは上下逆さで、上から紫、青、水色、緑、黄色、オレンジ、赤となっています。イタリアでは2002年から飛躍的に知名度の上がった旗で、イラク戦争やアフガン紛争への参加に反対する市民運動『Pace da tutti i balconi(すべての窓に平和の旗を)』では100万を超える旗がイタリア中の窓に掲げられたと言われています。

churchill一方、日本で写真を撮るときにお馴染みのピースサインも、平和に強く結びついて普及した身振りです。もともとは大戦時にウィンストン・チャーチルやシャルル・ドゴールが勝利を意味して用いていたVサインが始まりだったと言われています。その後1960年代の反戦運動でVサインが多用され、勝利のほかにも反戦や平和の意味が込められたピースサインとして広まりました。日本では70~80年代にピースサインとして一般的に流行り始め、今では写真撮影時の定番のポーズになっています。

現在、私たち日本人はポップなピースサインに馴染みがあるだけでなく、世界にもまれな平和主義の法のもとに暮らしています。悲惨な戦争を経て制定された日本国憲法は、平和的生存権の保障と恒久平和主義を基本原理としています。昨今大きな注目を集めている憲法9条改正の動きは、私たちと平和との関係を大きく変える恐れのある由々しき一大事。平和の大切さを重ねて説いてきた東西の古人も、「Santa pace!」と嘆いているに違いありません。hiroshima

ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲

La pace e la concordia hanno edificate tutte le città 平和と調和が都を築く

こんにちは。梅雨空のもとお天気はすっきりしませんが、みなさん元気にお過ごしでしょうか?

さて、今回のお便りでは、concordia(調和)という美徳をテーマに取り上げたいと思います。人と人のつながりが希薄になり競争的な個人主義が広がる現代において、私たちは「他者と和する」という徳についてあらためて考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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今年度のお便りのキーポイントになっている14世紀のフレスコ画『Allegoria del Buon Governo(善政の寓意)』。その中で作者アンブロージョ・ロレンツェッティはどのようにconcordiaの美徳を描いたのでしょう。女神の姿をしたConcordiaは木材を削る道具のかんなを膝に乗せ、正義の女神に仕える二人の天使からのびるロープを手に握り、そのロープをシエナ市民の手に渡しています。24人のシエナ市民は異なる服装を身にまとい、フレスコ画の中で一番大きく描かれた王様(シエナの町)の足元に並んでいます。シエナ市民のバラバラの服装は異なる職業や境遇の人々がシエナに集まっていることを表し、かんなは異質なものを平たく平等にするシンボルとして描かれています。つまり、シエナの町には異なるバックグラウンド、興味、利害を持つさまざまな人間が住み、皆が正義のもと平等に調和して暮らすことで偉大な都市国家シエナが成り立っている、という寓話が描かれているのです。

 

2. Effetti di buon governo in cittàこのように『善政の寓意』の中では調和の女神Concordiaがとても重要な役割を担っていますが、その隣に描かれたもう一枚のフレスコ画『Effetti del Buon Governo in Città(都市における善政の効果)』の中でもconcordiaの大切さが繰り返し強調されています。絵の中央で踊る女性は、平和的な共生に不可欠とされるconcordiaを象徴していると言われています。イタリアの諺に「La pace e la concordia hanno edificate tutte le città(平和と調和がすべての町を築いた)」とあるように、ロレンツェッティのフレスコ画は「市民の調和は平和とともに町の繁栄に欠かせない大切な徳である」と説いていました。現代イタリア語の名詞concordiaは、感情などの一致や調和を意味します。語源はラテン語の形容詞concorsから派生していて、もともとは「結合」という意味を付加する接頭辞con-と「心」を意味する名詞corが組み合わさっています。Concordiaと大文字で始まるとローマ神話の調和の女神(ギリシア神話のハルモニアにあたる)をさします。

 

4. Pace in Allegoria di buon governo古代ローマでは女神Concordiaは調和と共同体の神として崇められ、紀元前3世紀頃には現在のローマに複数の神殿が建立されていました。また、ローマ帝国時代にはその姿が多くの硬貨に刻印されていました。女神Concordiaは丈の長いマントをまとい、手にオリーブの枝やパテラと呼ばれる酒杯、豊穣の角(コルヌコピア)、伝令使の杖(カドゥケウス)を持った女性の姿であらわされています。

 

 

3. Shotokutaishi遠く離れた日本でも、古くからconcordiaの大切さが説かれていました。聖徳太子が7世紀につくったといわれる日本最古の成文法「十七条憲法」。その第1条「和を以て貴しと為す」はその極みで、他人と調和して生きる大切さについて言及しています。外国から新しい文化が伝わる中、複数の価値観を認めて平和的に共存することを人々に説いたのです。

グローバリゼーションの時代といわれる現代。平和国家として繁栄し、これからも平和な世界の発展を望む私たちは、古人にならって他者への理解や寛容、他者との調和といった大切な徳を忘れないよう努める必要があるのではないでしょうか。

La pace e la concordia hanno edificate tutte le città. 千代の繁栄を願い、平和も調和もしっかりと心に刻んでおきたいものです。

ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲

Speranza a buon mercato! さあさあ、希望の大売出しだ!

みなさん、こんにちは。新学期も始まり、春も満開となりました。近づくゴールデンウィークに、ますます気持ちも華やいでくるのではないでしょうか?

さて、今年度は14世紀にシエナで描かれたフレスコ画にちなんで、人の心に宿るとされるvirtù(徳)についてお便りしています。

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今回は、生命の息吹あふれる季節にぴったりの美徳speranza(希望)をテーマに取り上げたいと思います。
アンブロージョ・ロレンツェッティのフレスコ画『善政の寓意』の中で、Speranza(希望)はFede(信仰)とCarità(愛)とともに、擬人化されたシエナ共和国の頭上に描かれました。この3つの徳は、キリスト教では三対神徳とされ特別の意味を持っています。船を留めるために海底に沈めるイカリは希望を象徴するモチーフとされ、新約聖書には希望が人間の魂のためのイカリであると書かれています。

speranza1希望を意味する単語speranzaは、現代イタリア語では「未来や現在において自分の望むことを実現する、と信じ期待する気持ち」と定義されています。語源はラテン語のspes(希望)で、この名詞からラテン語の動詞sperareが派生し、その現在分詞から生まれた古フランス語のespérianceにならう形でイタリア語の名詞speranzaが誕生しました。ちなみに、詩などで使われる文学用語のspeme(希望)は直接spes から生まれています。

 

イタリア語のsperanzaには、「自らの期待に応えてくれると信じている人やモノ」という意味もあります。例えば「Tu sei la mia ultima speranza.(あなただけが頼りなのよ)」といった具合です。また、ancora di speranza(予備のイカリ)、speranza matematica(期待値)といった使い方があるほか、トスカーナ地方では複数形speranzeでヒゲナデシコ(学名Dianthus barbatus)を意味します。

最初のアルファベットを大文字にしてSperanzaとすると、神格化された希望の女神という意味になります。昔の彫刻などには、花のつぼみを右手に持ち、左手で服の裾を持ち上げた希望の女神の立ち姿が残されています。また、現代でもしばしば目にするSpes Ultima Deaというラテン語の表現は「希望は最後の女神」という意味で、女神Speranzaは最後まで人間の傍らに残り人間を見捨てなかった、というギリシア神話の逸話に由来しているようです。

S作家ジャンニ・ロダーリは詩『Speranza』の中で、店を持つならば自分はsperanzaを売ろうと歌いました。一方、ダンテ・アリギエーリの『神曲』では、地獄の入り口に「Lasciate ogne speranza, voi ch’intrate(山川丙三郎訳:汝等こゝに入るもの一切の望みを捨てよ)」の文字が書かれていました。詩聖のうたうように、希望を失ったらこの世は地獄になってしまうのかもしれません。春の緑のつぼみとともに、私たちの希望もあちこちで大きくふくらんでいきますように。

ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲

Considerate la vostra semenza: fatti non foste a viver come bruti, ma per seguir virtute e conoscenza. 人間とは徳と知識を求めて生きるもの

6_carnevaleこんにちは。寒いながらも少しずつ春の兆しが感じられる季節になりました。皆さん、お元気ですか?

さて、 2015年に入って間もなく私たち日本人は衝撃的な事件に襲われ、激動の世界情勢を改めて痛感しました。心ふさぐようなニュースの多い昨今、古人に学び、人間一人ひとりに宿るとされる美徳を見つめなおすことで、私たちの心に希望の光をともし続けることができないでしょうか?

今年度のお便りでは、約700年前にシエナで描かれた一面のフレスコ画を手掛かりに、人間の善き心、さまざまなvirtù(徳)について考えていきたいと思います。

Buon Governo今回取り上げるフレスコ画は、1338-9年に描かれた『Allegoria del Buon Governo(善政の寓意)』です。

当時「i Nove」と呼ばれる9人の市民代表の統治によって経済的にも文化的に栄華を極めていたシエナ共和国が、当代一の画家Ambrogio Lorenzetti(アンブロージョ・ロレンツェッティ)に委嘱して描かせた作品です。

『善政の寓意』は他の3つのフレスコ画とともにシエナ市庁舎の平和の間の壁に描かれ、議会に集う執政者たちを取り巻くように配置されました。

フレスコ画は、善い政治によって社会の秩序と調和を保ち、市民がより豊かな生活をおくれるよう、執政者たちにvirtùの大切さを日々説いていたのです。
Pace

ロレンツェッティは、『善政の寓意』の中に10あまりのvirtùを人や天使の姿で描き出しました。

擬人化されたシエナ共和国の頭上には、Fede(信仰)、 Speraza(希望)、 Carità(愛)の3つの神学的徳。シエナの横に鎮座するのは、西洋古典世界の基本的な四つの徳であるGiustizia(正義)、Temperanza(節制)、Prudenza(賢明)、Fortezza(剛毅)と、当時の徳としては珍しいPace(平和)、Magnanimità(寛仁)。そして、Sapienza Divina(神の英知)、2人目のGiustizia(正義)、Giustizia distributiva (分配的正義)、Giustizia Commutativa(交換正義)、Concordia(和)が、身分や職業の異なるさまざまな市民の調和をつかさどる美徳として描かれています。

徳に導かれた統治により、平和のもとで生き生きと豊かに暮らす人々。『善政の寓意』の右の壁にあるフレスコ画『Effetti del Buon Governo in Città e in Campagna (都市と田園における善政の効果)』には、シエナ共和国の理想郷が描かれています。

ところで、virtùとはそもそも何なのでしょうか?
現代イタリア語のvirtù(徳)は、ラテン語で「人間」を意味するvirから派生し、「力、勇気」を意味するvirtusという単語を経て生まれました。ラテン語のvirtusは、古代ローマでは主に戦いのために人間に授けられた力、勇気をもって戦うことのできる能力を意味していました。

西洋哲学やキリスト教の中で重要なテーマとして扱われて意味が変化し、現代イタリア語では「徳、美徳、道徳心」、「悪いことを遠ざけ良いことをしようとする本来人の心に備わる性質で、賞や罰を勘案せずにそれ自体を目的とする志向性」という意味を持つようになりました。

昔のイタリア語ではvirtude、virtute、vertù、 vertude、 vertuteなどとも綴られていました。「Considerate la vostra semenza: fatti non foste a viver come bruti, ma per seguir virtute e conoscenza」。ダンテ・アリギエーリは『神曲』の中で、本来人間とは野獣のように生きるのではなく、徳と知識を求めて生きるものであると詠いました。

Moneta Virtù洋の東西を問わず、私たちの心には美徳なるものがある、徳を身につける能力があると考えられてきました。多くの文化に共通する徳目もたくさんあります。

中国思想や儒教から日本に入ってきた道徳、例えば、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』にある8つの徳「仁義礼智忠信孝悌」や、新渡戸稲造の『武士道』に書かれた武士の七つの徳「義勇仁礼誠誉忠」、聖徳太子の制定した憲法第一条にある「和」などは、私たちに馴染みの深い徳でありながら、その大部分がロレンツェッティのフレスコ画に描かれたvirtùにも一致します。

古今東西、個々人の善き心によって多くの人が幸せに和して生きる環境を実現できると考えられている。ということは、私たち一人ひとりの心のあり方によって世界のあり方も変わってくる、ということになるのではないでしょうか。

先月たくさんの家に飾られていたマンリョウの花言葉は「徳のある人」だとか。縁起物にあやかり、私たちの内にあるvirtùとともに2015年もあまたの人々にとって心豊かな一年となりますように。次回からは、具体的にいくつかのvirtùをトピックにお便りしていきたいと思います。

ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲

Auguri di buone feste con origano! オレガノでよいお年を!

origano (7)こんにちは。2014年も残すところあとわずかとなりました。何かと忙しい時期ですが、皆さま寒さに負けず元気にお過ごしでしょうか?年の瀬のイタリアは、冷たい冬の空気にイルミネーションが美しく輝いています。今年最後のお便りは、イタリア料理を代表するハーブのひとつオレガノがトピックです。

オレガノoriganoはシソ科ハナハッカ属の多年草の総称です。30ほどの種類があるとされ、一般的に料理でおなじみのオレガノは学名Origanum vulgareという品種にあたります。夏に咲く小さなかわいらしい花にちなみ、花薄荷(ハナハッカ)という和名をもっています。原産は地中海沿岸と言われ、海岸沿いや森林、石の多い丘などに群生しています。オレガノの中には、オレガノ・ケントビューティ―などのように品種改良された観葉種も多くあります。

さて、イタリア語origanoの語源は、ὀρίγανον (または ὀρίγανος) というギリシア語のことばにさかのぼり、もともとは「山の輝き」、「山の喜び」という意味を持っていたようです。その後、ラテン語の origănum (または origănus)を経て現在のoriganoという単語になりました。地方によってoriganoには別名もあり、アンチョビ・ペーストの香り付けに使われていることからトスカーナ地方ではacciughero(アッチューゲロ)やerba acciuga(エルバ・アッチューガ)の名でも親しまれています。

origano (4)オレガノは古くから人々の生活に取り込まれていた植物で、古代ローマでは消化不良、けいれん、かゆみ、扁桃腺炎、おたふくに効く薬草として広く知られていました。現在でも消化促進や口内殺菌の薬に用いられたり、リキュール、香水、石鹸を作る際に用いられたりしています。

そして、オレガノは料理に使うハーブとしても古い歴史を持っています。乾燥させたオレガノの葉は、ほんのりと苦みのきいた芳しい香りのハーブ。イタリアをはじめ、地中海沿岸地方のキッチンには欠かせない食材です。肉や魚はもちろん、トマトとの相性も抜群。オレガノを使った代表的な料理の一つは、ナポリの肉料理pizzaiolaピッツァイオーラ。オリーブオイル、ニンニク、オレガノ、フレッシュトマトで作ったソースでお肉を煮込みます。

origano (1)バジルと同じくオレガノはpizzaにも欠かせないハーブです。定番のマルゲリータと人気を二分するpizza marinara(トマトソース、ニンニク、オレガノ、オリーブオイルのピッツァ)や、ナポリではromanaとよばれるnapoletana(トマトソース、モッツァレッラチーズ、アンチョビ、オレガノ、ケイパー、オリーブオイルのピッツァ)が有名です。

オレガノのシンボルは「繁栄」。古代ギリシアではオレガノの花輪で新郎新婦の頭を飾ったと言われています。オレガノのピッツァをつまみながら新年を迎えるのもまた一興、なんとも縁起がよさそうです。どうぞ皆さまよいお年をお迎えくださいませ。Auguri di buone feste!!

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ダンテ・アリギエーリ・シエナ

ヴァンジンネケン 玲

Come fa un tappeto di camomilla カモミール畑をお手本に

camomilla1こんにちは。秋もだいぶ深まってまいりました。皆さん、お元気にお過ごしでしょうか?イタリアは夏時間もついに終わり、いよいよ本格的に冬支度に入ります。秋の夜長にピッタリ(!?)のハーブということで、今回はヨーロッパ最古の薬草とも言われるカモミールについてお便りしたいと思います。

カモミールcamomillaは一部のキク科の植物の総称です。とりわけ有名なのは、ジャーマンカモミールとローマンカモミールの二つ。一年草のジャーマンカモミールは、イタリア語でcamomilla comuneやcamomilla volgareと呼ばれています。もう一方のローマンカモミールは多年草で、イタリアではcamomilla romana、camomilla inglese、camomilla nobileの名で親しまれています。

camomilla2日本にカモミールが持ち込まれたのは19世紀初頭。江戸幕府がオランダから取り寄せた薬草の中にカモミールも含まれていたといわれています。当初はオランダ語Kamilleをもとにカミルレ、カミツレ、カミッレなどと呼称にゆらぎがあったようですが、次第に統一されて和名はカミツレ(加密列)となりました。現代の日本ではカモミールの名がより普及しています。

イタリア語camomillaは、ギリシア語のχαμαίμηλονからラテン語chamomillaを経てできた言葉と言われます。もともとの意味は「大地のリンゴ」。カモミールの花が放つリンゴのような香りに由来するようです。

イタリア語でcamomillaと言えば、植物自体を意味するのと同時にカモミールティーのことも指します。それほど生活に密着しているカモミールのハーブティーは、眠る前に飲むお茶として特に有名です。乾燥させたカモミールの花を煎じたお茶にはリラックス効果があるため、不眠に悩んでいたり、ストレスの負荷が高まっていたりする時にはありがたいお茶なのです。トスカーナ地方では、レモンをちょっぴり垂らしてお砂糖やハチミツを入れて飲みます。camomilla3

そのほかにもカモミールには様々な作用があると言われ、4000年以上も前から人類の生活に取り込まれていました。古代エジプトでは聖なる植物として太陽神ラーに捧げられていたほか、マラリアの治療にも用いられていたようです。アラビア文化圏ではリューマチの治療などにカモミールの精油が使われ、また、アングロ・サクソン族の古書によればカモミールは聖なる9植物の中で最も力を持つ薬草でした。

camomilla4カモミールの花言葉は「逆境に耐える」。イタリアの古い諺によれば、人生とは、踏まれれば踏まれるほど成長し続けるカモミールのように立ち向かうものだとか。今宵は、カモミールティーでリラックスしつつ、明日への力を充電してみてはいかがでしょうか?

ダンテ・アリギエーリ・シエナ

ヴァンジンネケン 玲

La menta ti calma il cuore ほてった心はミントでクールダウン

menta6こんにちは。暦の上ではそろそろ秋も近づいてきたとはいえ、まだまだ暑い今日この頃。みなさん元気にお過ごしでしょうか?

今回のお便りは暑さも吹き飛ばすような清涼感いっぱいのハーブ、ミントについてお便りします。

ミントは600種を超えるともいわれるシソ科ハッカ属のハーブの総称で、日本ではハッカ(薄荷)とも呼ばれてきました。馴染みの深いものには、ペパーミント(セイヨウハッカ)やスペアミント(ミドリハッカ)などがあります。20世紀初頭には日本が世界一のミント生産量を誇っていたとも言われ、ミントは私たち日本人とも深いつながりをもつハーブです。 ミントはヨーロッパ、アジア、アフリカと広い地域に生息し、古今東西、生活のさまざまな場面で用いられてきました。古代エジプトでは、ピラミッド建設の労働者の食事にミントが供されたり、ミイラの下にミントが敷かれたりしていたと言います。また、媚薬のような効果があるとされていたため、古代ローマの兵士は戦争の前に摂取することを禁じられていたとも伝えられています。

menta2イタリアではミントはmentaと呼ばれ、menta piperita(ペパーミント)やmenta romana(スペアミント)などを筆頭に種類はさまざま。現在も歯磨き粉、湿布薬、スイーツ、ガム、ジェラートなど、色々な用途で使われています。mentaに縮小辞をつけてmentinaと呼ばれているのは、ミントとお砂糖でできたタブレット状の飴。乾燥した葉を使ったtè alla menta(ミントティー)は、フレッシュな香りでリラックス効果があるだけでなく、消化を助けるとも言われています。ミントの葉をふんだんに使ったカクテルmojito(モヒート)はヘミングウェイもこよなく愛したと言われますが、イタリアのバーでも人気のあるドリンクです。 イタリア語mentaの語源をめぐっては諸説ありますが、ラテン語のmĕnthaがギリシア語のμίνϑηと似ていることから、ギリシア神話の妖精メンターにちなんでいるという説が広く知られています。冥府の神ハーデスに愛されたメンターは、ハーデスの妻ペルセポネによって草に変えられてしまい、この草がミントの語源になっているというものです。

menta3さて、最近日本では餃子にまで使われる大人気のミントですが、イタリアのキッチンでも大活躍するハーブです。例えば、簡単に作れるミントペーストは、いつもと一味違った爽快感を食卓にプラスできる万能選手。ミントの葉、松の実、エクストラバージン・オリーブオイル、塩、こしょうをミキサーで混ぜるだけで、グリルした魚やカルパッチョ、焼いたお肉にもよく合うソースになります。松の実をアーモンドに変えるとまろやかに仕上がり、グリルした野菜にもピッタリ。また、ドライトマトなどと一緒にパンにのせれば簡単なアペリティフにもなります。

シチリアでは、La menta ti calma il cuore(ミントは心を落ち着ける)ということわざがあるようですが、秋までもう一息、美味しいミントペーストで心も体もクールダウンしながら爽やかに過ごしてみてはいかがでしょうか?

ダンテ・アリギエーリ・シエナmenta4

ヴァンジンネケン 玲

Il Rosmarino, rugiada di mare 海のしずく、ローズマリー

rosmarino1こんにちは。太陽のまぶしい夏がやってきました。みなさんいかがお過ごしですか?6月に入りイタリアの夏も本番。海岸には色とりどりのパラソルが並び、ジェラートも一段と美味しいバカンスのシーズンになりました。さて、今回は強い陽射しの下でも元気いっぱいに地中海沿岸を彩るハーブ、ローズマリーをテーマにお便りします!

日本でもおなじみのローズマリーは、地中海沿岸を原産とする常緑性の木。日本には江戸時代後期に輸入されたと言われ、現在は調理用のハーブとして用いられるだけでなく、庭や花壇などに植えられ観葉植物としても広く知られています。和名はマンネンロウ。「香りの絶えない」という意味からマンネンコウ(万年香)と呼ばれていたものがなまってできた言葉と言われています。生薬として使われる場合は、「迷いをさまして頭をすっきりさせる」という意味をもつ中国名の迷迭香がもとになり、メイテツコウと呼ばれています。

rosmarino3イタリア語でローズマリーを意味することばrosmarinoは、ラテン語のros marinusやrosmarinusが語源。ローズマリーが海岸に沿って自生していたことから、もともとは「海の露」という意味を持っていました。トスカーナ地方のローズマリーの呼称ramerinoは、イタリア語のrosmarinoに「枝」を意味するramoという単語が混ざってできたことばだと言われています。同じく英語名のrosemaryもラテン語のrosmarinusを起源に持ちますが、こちらは英語のrose(バラ)とMary(マリア)という二つの単語が混ざって変化したようです。

お料理では、まさに万能選手。新鮮な葉や乾燥させた葉は、レバーペーストやジャガイモをベースとした料理に使われるほか、羊、牛、ウサギ、鴨などのローストをはじめとする肉料理やパン、フォカッチャなどとも相性が抜群です。ローズマリーを漬け込んだオリーブオイルは料理に風味を加えるだけでなく、消化を助ける作用もあると言われています。また葉に比べて馴染みの薄いローズマリーの花は、サラダなどに用いられます。

ローズマリーにまつわる説話も枚挙にいとまがありません。中でも有名なエピソードは、聖母マリアにちなむ伝説です。聖母がエジプトから逃れる際にマントをローズマリーの木にかけると、もともと白かったローズマリーの花がマントと同じ水色に変わったと言われています。また、近代にはナポレオンの逸話があります。ローズマリーが頭を覚醒させるとして、ナポレオンは作戦を練る際にローズマリーの精油を大量に消費していたそうです。

rosmarino5消臭、殺菌、抗酸化、鎮痛などの効能があるとされているローズマリーは、古くから生活のさまざまな場面で使われてきました。ペストが流行した時期には、空気のけがれた場所でにおいを嗅ぐことができるようにポケットや袖口などにローズマリーをしのばせて歩いたと言われ、また、ヨーロッパの病院では重病患者のいる病室でローズマリーを焚き、空気のけがれを浄化していたと言われています。

ローズマリーが象徴するシンボルは、「愛」や「思い出」。それにまつわる民間信仰もたくさんあり、例えば、ローズマリーの小枝を水色のリボンでまとめて枕の下に入れて寝ると、夢で思い出の人に会えるのだとか。嗅覚と記憶の結びつきについてはさまざまな研究もあり、あながち迷信とも言いきれなさそうです。今宵、ローズマリーでお肉をローストしたら、懐かしいあの人が夢で待っているかもしれませんね。

ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

Dormi sugli allori? 月桂樹の上で眠っちゃうの?

alloro2こんにちは。新緑がまぶしく、晴れた休日は外で過ごすのが気持ちのいい季節になってきました。

出会いの春に別れの春にと中々せわしない時期ですが、みなさん元気にお過ごしでしょうか?さて、今回はalloro(月桂樹)をテーマにお便りしたいと思います!

ベイリーフ、ローリエ、ゲッケイジュなどの名で呼ばれ、主に料理で使うベーシックなハーブとして親しまれている月桂樹の葉。日本には20世紀初頭に月桂樹の木が輸入されたと言われています。

そして、日露戦争中に旅順開城を祝って東郷平八郎が日比谷公園に月桂樹を植えたことをきっかけに、その名が広まったようです。(「月桂冠」の酒銘が商標登録されたのも同時期です。)

alloro3さて、この月桂樹。小アジア原産の常緑樹で、古くから地中海北部沿岸の地域で栽培されてきました。イタリアでは中部から南部にかけて自生し、昔からシチリア料理でよく使われるハーブであったことから、現在はイタリア政府によってシチリアの特産物に指定されています。

その用途は多岐に渡り、肉や魚に風味付けのハーブとして用いられることはもちろん、洋服ダンスの虫よけ、本や羊皮紙の保存剤、消化促進作用のある食後酒、咳止めなどとして用いられています。

alloro4古代ギリシアやローマでは、月桂樹はアポロの聖樹とされていました。オリンピック競技の優勝者や偉大な詩人は、知恵、勝利、栄光を象徴するシンボルとして月桂冠laureaを頭上にいただきました。

この風習は中世やルネサンス期のイタリアでも踏襲され、月桂冠を被ったダンテやペトラルカの肖像画が残されています。イタリアの大学を卒業したホヤホヤの学士が今も月桂冠を被るのは、その名残です。また、イギリスには現在もこの風習が制度として残り、英国王室はワーズワースなど第一流の詩人に桂冠詩人poeta laureatoの称号を与えています。

alloro5イタリア語で月桂樹を意味する名詞alloroは、ラテン語で月桂樹を意味する名詞 laurusに指示代名詞のついたilla laurusという表現から派生したと言われています。

古くからalloroが栄誉や成功のシンボルであることから、イタリア語では勝利や名誉ある賞などを指す名詞としても使われます。

例えば、riportare/conquistare l’alloro(月桂樹を勝ち取る)という表現は、「勝利を手にする」という意味になります。一方、dormire/riposare sugli allori(月桂樹の上で眠る)は、成功に満足してその後を無為に過ごすこと。温かな陽気についつい眠気もさそわれますが、どうやら月桂樹の上では眠らないほうがよさそうですね!

alloro6ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン玲

Al basilico sole e acqua バジルには、お日様とお水をたっぷりと

basil1こんにちは。寒いながらも冬の陽だまりが気持ちのいい今日この頃、いかがお過ごしですか?節分にはたくさんの福をお招きになったでしょうか?

さて、今年のお便りは、皆さんの2014年が香り高く豊かな1年になることを願い、イタリア料理で使われているハーブをトピックにお届けしたいと思います!

第1回目はイタリア料理の代表的なハーブの一つ、バジルについてのお便りです。 正式にはOcimum basilicumという学名がついているバジル。インド原産のシソ科の一年草です。日本では、現在は「バジル」、「バジリコ」と呼ばれ主に食卓で親しまれていますが、古くは民間の漢方薬として用いられ、種を目の中に入れてゴミを取ったことから「メボウキ」(=目のホウキ)と呼ばれていました。

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一方、イタリア語でバジルを意味するお馴染みの単語basilicoは、ラテン語のbasilĭcumがもとで、さらにはギリシア語のβασιλικόνが語源となっています。元来は「王様の葉」という意味があり、古くからさまざまな用途があったことにちなんでいます。ガリア人はバジルを神聖な植物とし、特別な儀式を経て身を清めた人にだけ栽培を許していました。インドでもバジルは聖なる植物とされ、寺院の周りに植えられていました。また、エジプトではミイラを用意するための香油調合に用い、ローマ人は調味料や媚薬や傷を治す特効薬として役立てていました。

多様な効用と同じく、バジルが象徴する意味もバラエティ豊かです。「憎しみ」、「あなたからの侮辱を忘れない」などという物騒な花言葉から、「恋の媚薬」、「恋する乙女はバジルを窓辺に飾る」というロマンチックな民間伝承まで様々です。
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ジェノヴェーゼ・ペースト、ピッツァ・マルゲリータ、カプレーゼなどなど、バジルを使ったイタリア料理も数えきれないほどあります。

おおかたのハーブと同様、温かい料理に入れる場合は風味を損なわないように最後の最後に加えます。葉は包丁で切らずに、手で千切ったり潰したりするのが風味を最大限に引き出すコツとされています。

バジルの育成には、「Al basilico sole e acqua, ai bambini poppa e pappa(バジルには太陽と水、子供にはミルクとごはん)」と言われように、温かい場所とたっぷりの水やりが必要とされています。basil3また、昔の農家では「悪口雑言を吐きながら種をまくとバジルが元気のよい大きな葉を付ける」と言われていたようで、この迷信から「cantare il basilico(思い切りののしる)」という表現も生まれました。 時にうっとりと愛する人を想い、時に罵声を浴びせながら(!?)、大切に大切に育てたバジルで、食卓に香りと彩りをプラスしてみてはいかがでしょうか?

ダンテ・アリギエーリ・シエナ ヴァンジンネケン 玲

Mangerete il panettone?

今年も無事に年末をお迎えですか?

presepio
こんにちは。町のイルミネーションがキラキラと美しい季節、皆さんいかがお過ごしですか?寒い冬は、家族や友達と過ごす団らんのひと時がひときわ温かく感じられますね。クリスマスが迫り、イタリアはプレゼント探しに奔走したり帰省準備をしたりする人でどこか忙しない雰囲気です。ご存知の通り、クリスマスは家族で迎える大切なイタリアの祝日。クリスマスから年末年始にかけて長期の冬休みを取るイタリア人も少なくありません。今回は、この時期にいただくクリスマスのお菓子をテーマにお便りします。

mini panettone
近年、日本でも見かけるようになったイタリアのクリスマス菓子。パネットーネやアマレッティなど、綺麗にラッピングされたイタリアのdolciは、日本やヨーロッパの国々をはじめ、イタリア国外でもクリスマス休暇の特別なスイーツとして人気があります。

中でもとりわけ有名なのが、ロンバルディア州のお菓子panettone(パネットーネ)。起源については諸説あり、「1300年に、とある子爵の宮廷で生まれた」、「ルードヴィーコ・スフォルツァの統治する15世紀のミラノで誕生した」などいろいろですが、実際の誕生はもっと古くに遡るという説が有力なようです。ミラノの方言でpanattonが語源です。

pandoro
並んでおなじみなのが、ヴェローナのお菓子pandoro(パンドーロ)。こちらはオーストリアのお菓子に起源があると言われ、さらに遡るとフランスのブリオッシュにたどり着くと言われています。温めたパンドーロに粉砂糖をかけていただくのが王道とされ、通常は好みで甘さの調節ができるよう粉砂糖が小さな袋に分けられてお菓子の箱に入れられています。語源は読んで字のごとく、黄金色のパンを意味するpan(e) d’oroです。
italian sweets
現在はイタリア各地名産のクリスマス菓子が全国的に手に入るようになり、シエナを代表するクリスマスのお菓子panforte(パンフォルテ)、トスカーナ州のcantucci(カントゥッチ)、ナポリの小さな丸い揚げ菓子struffoli(ストゥルッフォリ)、北イタリアで特に目にすることの多いトレンティーノのzelten(ゼルテン)、ジェノヴァのpandolce(パンドルチェ)、シチリアのbuccellato(ブッチェッラート)、クレモナのtorrone(トッローネ)など、食卓にあがるお菓子もバリエーション豊かです。

どれもこれも美味しいイタリア菓子。クリスマスの温かい団らんのひと時に、家族や友人と取り分けて色々なdolciを味わってみたいですね。

本年もご愛読ありがとうございました!2014年も楽しい記事を発信していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。皆さま、どうぞ素敵なクリスマスと年末年始をお迎えください。Buone feste!

ダンテ・アリギエーリ・シエナ

ヴァンジンネケン 玲

Ognissanti, manicotti e guanti.万聖節にはマフと手袋をお忘れなく

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 こんにちは!秋も深まり、朝晩はめっきり冷え込むようになりました。そろそろ冬支度も万端に整えておきたい今日この頃、皆さんいかがお過ごしですか?
 さて、今月末10月31日はハロウィンのお祭り。イタリアでは比較的新しいイベントながらも、町を歩くとカボチャのお菓子や、カーニバルを彷彿とさせる仮装衣装を見かけるようになりました。しかし、この時期のイタリアでもっと大切な日は、実はその翌日11月1日なのです!今回は「諸聖人の日」と、それにちなんだシエナのお菓子についてお便りします。

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 イタリアでは、毎年11月1日は「Ognissanti」、「Tutti i santi」、「i Santi」などと呼ばれる祝日で、日本語では「諸聖人の日」、「万聖節」と訳されています。一年に一度すべての聖人や殉教者を祀る東方の習慣が起源とされ、キリスト教の祝日として11月1日に祝われるようになったのは9世紀以降と言われています。
 一方、その翌日にあたるハロウィンはケルト文化がルーツであるとされています。ハロウィンとOggnisantiの祝祭自体のつながりに関しては諸説ありますが、Halloweenという名称についてはカトリックの祝日「諸聖人の日」と切り離せない関係があり、ハロウィンは「諸聖人の日の前夜」という意味をもつAll Halllows’ Eveが変化してできたことばです。

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 さて、祝日Ognissantiは、ことばの通りすべての聖人を祀る日。厳密には、聖人のほか殉教者や天国にいったとされる全ての人に祈りを捧げる祝祭です。聖人を意味するイタリア語santoの語源は、ラテン語の動詞sancire(批准する、認める)の過去分詞sanctus。もともとは護民官、城壁、門など、法や戒律によって認可されたすべてのものを指していました。
 その後、キリスト教の戒律で崇めるべきもの、つまり、「聖なる」という意味が一般的になり、名詞の「聖人」となりました。

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 シエナではこのOggnisantiの祝日に「pan co’ santi」、または「pan coi santi」と呼ばれる焼き菓子をいただきます。干しブドウ、クルミ、黒コショウを練りこんだpan co’ santiは家庭で作られるほか、10月初旬頃からはお店やレストランにも出回り、年末のクリスマス休暇ごろまでパティスリーなどに並びます。
 pan co’ santiのお菓子はお茶やコーヒーと一緒に供されるほか、貴腐ワインvinsantoや新ワインvino novelloとの相性も抜群です。

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 In chiesa co’ santi, e all’osteria co’ ghiottoni(教会は聖人と、レストランは食いしん坊と)と言われますが、天高く馬肥える秋、聖人も食卓に降臨して美味しいpan co’ santiに舌鼓を打っているのかもしれません!
 シエナに足を伸ばす際は、皆さんもぜひpan co’ santiを召し上がってみてくださいね。
  
ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

心に宿る甘い思い出

Un ricordo dolce in un cantuccio del cuore.
心に宿る甘い思い出
 

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こんにちは!暑いあつい今年の夏、いかがお過ごしですか?お盆休みも過ぎ、暑い季節もそろそろ終わりに近づいてきました。イタリアではferragosto(聖母被昇天の祝日)、そしてシエナでは8月のパリオ祭も終わり、夏休み気分も一段落です。涼しくなってくると旺盛になるのが食欲!ということで、今回は食欲の秋に先駆けて、シエナのスイーツdolci senesiについてお便りしたいと思います。

イタリアの各地に名産のスイーツがあるように、シエナでも古くから独自のお菓子が作られてきました。シエナのお菓子は旅のお土産としても人気があり、イタリア国内だけでなく国外でもよく知られています。

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その代表格と言えるのがpanforte。小麦粉、砂糖、スパイス、アーモンド、ヘーゼルナッツ、砂糖漬けのフルーツから作られる背の低い丸いケーキで、クリスマスのスイーツとしても有名です。その名の通りとてもかたく(pane forte = pane sodo)、手に取るとずっしりと重みを感じるほど食べ応えもあります。10世紀頃までは小麦粉と水をベースにした質素なお菓子でしたが、十字軍が東方から持ち帰った高価なスパイスを生地に練りこむようになり、貴族のための高価なお菓子になったと言われています。
同じく有名なのが、ricciarelliと呼ばれるやわらかいクッキーのような焼き菓子。アーモンドプードルが40%ほど入った風味豊かなお菓子です。こちらも起源は東方と言われ、16世紀に十字軍から帰還した騎士が持ち込んだお菓子がベースになったとされています。当時は貴族のサロンやパーティーなどで饗されたようです。現在はチョコレートの入ったバージョンもあり、お茶やコーヒーだけでなく、アマレットのリキュールや甘めの発砲ワインなどとの相性も抜群です。

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食後酒と一緒にいただくスイーツと言えばもう一つ、アーモンドの入ったカリカリのクッキーcantucciを忘れることはできません。甘口の貴腐ワインvin santoといただくお馴染みのクッキーは、別名biscotti di Pratoとも呼ばれ、シエナを含むトスカーナ州の各地で昔から作られています。1691年版のクルスカ学会の辞書にはcantucciと呼ばれていたお菓子について記載がありますが、当時特に有名だったのはピサで作られたものだったようです。もともとの語源はcantoという名詞で、cantuccioには本来「隅っこ」という意味があります。
シエナには、ほかにもcavallucciやpan co’ santiなど色々なdolciがあります。Conserviamo un ricordo in un cantuccio del cuore(心の片隅に思い出をしまっておく)。異国で出会ったスイーツに旅の思い出をいっぱい詰めて、甘いバカンスを口いっぱいに頬張ってみてはいかがでしょうか?
  
ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

寒さで凍える冬、ジェラートをほおばる夏

D’inverno congelato, d’estate con gelato.
寒さで凍える冬、ジェラートをほおばる夏
  こんにちは。ようやく夏らしいお天気になり、こんがりと日焼けした肌が町を彩り始めました。暑い日にいただきたいdolceといえば、誰もがご存知、夏の風物詩ともいえるジェラートです。秋冬は休業のジェラート店も春先からぼちぼちと営業を再開し、お天気のいい真夏日には長い行列を眼にするようになってきました。今回は旬の真っ盛り、美味しいイタリアのgelatoについてお便りします。
 

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日本でもすっかり定着したジェラートという言葉。「凍る、凍らせる」という意味を持つ動詞gelareの過去分詞から派生した名詞です。接尾辞をgelatoにつけてgelateriaとするとジェラート店、gelataioとするとジェラート屋さんを意味する単語になります。また、縮小辞をつけてgelatinaとすると同じく夏に美味しいゼリーになります。
 ジェラートの歴史についてはいろいろな説がありますが、その起源は、シチリアとアラブの二つの文化が融合して生まれたグラニータに遡るようです。そして、16世紀、カテリーナ・ディ・メディチとアンリ2世の結婚式に際して、フィレンツェのルッジェーリという料理研究家が今日のジェラートに似たデザートを作ったといわれています。
 
  続く17世紀、シチリア出身の料理人フランチェスコ・プロコピオ・ディ・コルテッリがパリにカフェ・ル・プロコップをオープンさせます。フランチェスコは、祖父が趣味で研究していたジェラート製造機を改良し、たくさんのジェラートを作りました。カフェに登場するやいなや、ジェラートは流行に敏感なパリの人々を夢中にさせました。パリに集う芸術家や思想家たちもその例に漏れず、かのヴォルテールは「こんなに美味しいジェラートが合法だなんて!(La glace est exquise – quel dommage il n’est pas illegal)」とコメントを残しており、その虜になっていた様子が窺えます。
 

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現在、ジェラートには大きく2つの種類があり、大量生産型のgelato industrialeと手造り型のgelato artigianaleがあります。イタリアは世界で唯一ジェラート市場の55%をgelato artigianaleが占める国と言われ、半島には小規模経営の美味しいジェラート店がひしめいています。夏は、いろいろなジェラテリアを巡りながらお気に入りのお店を見つけて、イタリアをひんやり甘く味わってみてはいかがでしょうか?
  
ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

シエナの裏 ウトウトまどろむ四月

campagna.JPGAprile, dolce dormire.

 こんにちは!若草の萌える春うらら、いかがお過ごしですか?

イタリアでは復活祭のバカンスも終わり、春も本番です。温かな陽が心地よく、今まで家にこもりがちだった人々もハイキングに出かけたり、広場やカフェのテラスでおしゃべりに花を咲かせたりと、外で過ごすことが多くなってきました。

 そんな春は、まさにdolceな季節。dolceと聞くとついつい美味しいスイーツのことで頭がいっぱいになってしまいがちですが、この形容詞は古くから詩の中でも使われてきた雅な言葉で、「甘い」という味覚のほかにもたくさんの美しい意味を持っています。ヴァイオリンの甘美な調べil dolce suono di un violino、シエナのなだらかな丘陵地帯le dolci colline senesi、のんびりと過ごす贅沢な無為il dolce far niente、愛情に溢れた眼差しuno sguardo dolceといった具合です。そして、穏やかな暖かい春風un dolce zefiroや、うららかな春の日にウトウトと誘われる眠気un dolce sonnoなどなど、温暖な春はdolceでいっぱいです。

dolcedormire1.GIF Andiamo a fare merenda in campagna? そんな穏やかな春の日にイタリア人が愛して病まないことの一つが、友だちや家族と郊外へ出かけてピクニックをしたり、大自然に囲まれたバールやトラットリアなどで軽食を楽しんだりする時間。お茶やコーヒーと一緒に甘いお菓子dolciを食べたり、早めのハッピーアワーさながら、ブルスケッタやチーズや生ハムなどをおつまみにワインを飲んだりしてゆったりと午後のひと時を過ごします。 

 
merenda1.JPG 郊外へ足を伸ばすことができない平日は、町中のバールやカフェのテラス席が春を楽しむ特等席。会社や大学の終わる5時ごろになると、たくさんの人がハッピーアワーaperitivoに集い、羽を伸ばします。バールのカウンターに並ぶ無料のおつまみに舌鼓を打ち、気心のしれた仲間とのおしゃべりに興じながら口にする冷えた一杯。夕方の心地よい風に吹かれながらaperitivoを堪能する人々で賑わうバールのテラス席は、まさに春から夏にかけての風物詩です。

 Aprile, dolce dormire e forte sospirare; i granai sono vuoti e le botti cominciano a sonare. 春眠が暁を覚えないのは古今東西の常のようですが、あとで深いため息をつかないように仕事にも勉強にもしっかり励みつつ甘い季節を堪能いたしましょう!
  
ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

シエナの裏-春も近づくヴァレンタイン!

Per san Valentino la primavera sta vicino.

春も近づくヴァレンタイン!

 こんにちは!立春とは言えまだまだ寒い2月、いかがお過ごしですか?クリスマスから1月にかけてのバカンスシーズンの名残を惜しみつつ、2013年も本格的にエンジンがかかってきました。昨年の「festa」に引き続き、今年は「dolce」をテーマにシエナからお便りしたいと思います!

5_carnevale.jpg さて、2月のイタリアは寒さがまだ厳しいながらも、謝肉祭にバレンタインデーにとホットな行事が目白押しです。華やかなカーニバルの仮装やバレンタインのロマンティックなプレゼントとともに欠かせない存在がdolci(お菓子)です。

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 カーニバルのお菓子は地方によって多種多様。その中でも有名なのが小麦粉、卵、砂糖で作った生地を焼いたり揚げたりして粉砂糖をまぶしたdolce。細長くギザギザの切り口が特徴です。通称chiacchiereと呼ばれる一方で地方ごとに名前が変わるのも大きな特徴として知られています。例えば、ジェノヴァやトリノなどではbugie、ローマやヴィテルボなどではfrappe、トスカーナではcenciやcrogettiやstruffoliの名で親しまれています。
 
  このように地方ごとに変わる同義語はgeosinonimiと呼ばれ、豊かなイタリア語を彩る要素の一つになっています。特に生活に密着した言葉は地域によって異なる名前で呼ばれることが多く、チーズがcacioやformaggioとなったり、スイカがcocomeroやanguriaと名を変えたりします。

 
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 一方、ヴァレンタインデーのdolciに目を移してみると、こちらは日本のチョコレートのような「王道」はなく、クッキーやケーキなどのさまざまなdolciがプレゼントになっています。もともとはロマンティックなメッセージカードの交換に添えられていたdolciや花のプレゼント。イタリアでは一人ひとりのアイディアによるところが大きく、バラの花や宝石やデザートワインを贈るなど、恋人のハートを溶かすような思い思いの「甘いプレゼント」を選ぶようです。
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 2月は季節のお菓子をいただきながら、いつも以上に甘い生活が堪能できそうですね!

Buon Carnevale e buon san Valetino!

 

ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

クリスマスはご馳走でお祝い!

A Natale, o grosso o piccino, su ogni tavola c’è il tacchino.< ?xml:namespace prefix = o ns = "urn:schemas-microsoft-com:office:office" />

クリスマスはご馳走でお祝い!

 

 こんにちは。あっという間に迎える年の瀬、2012年も終わりに近づいてきました。シエナではクリスマスの準備も大詰めに入り、イルミネーションで彩られた町は家族や友人へのプレゼント選びに奔走する人々でいっぱいです。本年度最後のお便りはイタリアを代表するfesteの一つ、クリスマスをテーマにお届けします!

 


 
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 イタリアのクリスマスは、カトリックでは復活祭に次ぐ重要な祝日。12月に入るとキラキラと飾り付けられた町のあちこちからクリスマスソングが流れ出し、イブやクリスマス当日も沢山の人が外出して祝う日本のクリスマスに比べると、イタリアのクリスマスはぐっと落ち着いた雰囲気があります。イタリア語でクリスマスを意味するNataleは、もともと「誕生の」という意味を持つ形容詞。単語が示す通り、イエス=キリストの誕生を祝うfestaとして宗教的に大きな意味を持つ祝祭であるとともに、イタリアでは何よりも家族と過ごす特別な時間です。


  家族の集まる温かい食卓はクリスマスの象徴でもあり、そこには古くからの伝統が息づいています。実は、タイトルの諺やディケンズの小説にあるようなクリスマスの七面鳥料理は、イタリアでは比較的新しいメニュー。地域によってバリエーションがありますが、魚や野菜をメインとしたイブの晩餐と、去勢された雄鶏
capponeとスープをメインとしたクリスマス当日のお昼の正餐が昔ながらの典型的なクリスマスの食卓とされています。

 

 七面鳥が16世紀にアメリカ大陸からヨーロッパに渡ってきたことを考えると、フライやマリネとしてイブに供される魚は長い歴史を経て現代に受け継がれてきた食材です。魚は古代からインド=ヨーロッパ文化圏では豊穣と知恵のシンボルであり、またキリスト教ではichthysと呼ばれるイエス=キリストのシンボルです。(ギリシア語で「イエス=キリスト、神の子、救世主」を意味するΙησος Χριστός Θεo Υιός Σωτήρをラテン語に置き換えて頭文字を並べると、ギリシア語で「魚」を意味するichthysとなります。)

 


Ichthys.jpg クリスマスに限らず食はさまざまな
festeに欠かせないの要素の一つです。古くは儀礼の中で神様に捧げられたりと重要な意味持っていました。その名残としてfeste自体を象徴するような食の伝統は現代にも多く伝えられ、クリスマスはその代表格とも言えます。

 


ornamento (1).jpg 例えば、ある時代の典型的なクリスマスのギフトは、アーモンド、ドライフルーツ、胡桃、ヘーゼルナッツ、栗、果汁と蜂蜜をベースにした手作りのケーキなどでした。胡桃、ヘーゼルナッツ、アーモンドなど硬い殻に包まれたナッツ類は「堅固に守られた真実」のシンボル、乾燥イチジクは沢山の種があることから「豊潤」や「繁栄」のシンボル、という具合にそれぞれに長い歴史が隠されています。そしてそれを受け継ぐように、現代イタリアのクリスマスケーキがあり、特に砂糖漬けのドライフルーツの入った甘いパン状のお菓子は典型的なクリスマスの焼き菓子として全国的に食べられています。

 

  ご馳走を囲みながら温かい家族団欒のひと時を分かち合えることを喜び、お互いの幸せを祈るクリスマス。みなさんにも素敵なクリスマスが訪れますように。Tanti auguri e buone feste!!

ダンテ・アリギエーリ シエナ

ヴァンジンネケン

 

シエナの裏-ワインは長寿の薬

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ワインは長寿の薬

 こんにちは。秋もだいぶ深まってきました。芸術鑑賞、読書、グルメなど、季節ならではの楽しい時間をお過ごしでしょうか?シエナではオリーブやブドウの収穫も一段落して、オイルやワインの初物が出回り始めました。今回はイタリアの食卓と切っても切れない関係にあるワインのお話し。11月のnovello解禁のお祝いをテーマにお便りします。


vitigno2.jpg 
通称novelloと呼ばれるvino novelloは、収穫されたばかりのブドウから作られる「新酒」とも呼ばれる旬のテーブルワイン。収穫年の1231日までに瓶詰めされ、解禁日は毎年116日とされています。厳密にはvino nuovoと呼ばれる一般的な新酒とは異なり、novelloは最低30%以上の新物のブドウを含み、フランスのボジョレー・ヌーボーと同様に「炭酸ガス浸潤法」という醸造方法で作られます。この醸造方法ではブドウを破砕せずに自然発酵させるので、novello独特のタンニンが少なくフレッシュで軽い口当たりに仕上がります。

 形容詞novelloは現代イタリア語で「生まれたての、できたての、新米の」という意味があり、patate novelle(新ジャガ)、sposi novelli(ホヤホヤの新婚さん)などと使われます。語源は形容詞nuovoと同じくラテン語のnovusで、それに縮小辞をつけたnovellusがもとになっています。


enoteca chianti.jpg 解禁日にはイタリア各地で新酒を祝う
festeが盛大に開催されます。シエナの町では、毎年115日の夜中から6日の未明にかけて旧市街のトロメイ広場でnovello祭りが開かれます。主催はCivettaのコントラーダで、屋外コンサートに興じながらnovello解禁の夜を祝おうという趣旨。広場の小さな屋台ではボトル15ユーロ、紙コップ一杯1ユーロという手軽な値段でシエナ近郊で作られたvini novelliが販売されます。屋台には老若男女が群がり、小銭を手に押し合い圧し合いでワインを買い求めます。

 また、novelloはその年のブドウの出来を評価するためにも大切なワイン。エノテカやレストランではvini novelliの試飲会も催されます。シエナの国立エノテカで開かれるnovello祭りでは、テラスで供される相性抜群の焼き栗を楽しみながらイタリア各地の新酒をテイスティングすることができます。


 
vitigno.jpg エドモンド・デアミーチスが
Il vino aggiunge un sorriso all’amicizia ed una scintilla all’amore. と言ったように、気心のしれた仲間や大好きな恋人と過ごすnovello解禁のお祝いはすてきな時間になりそうですが、飲みすぎにはくれぐれもご用心。Errare è umano, perdonare è divino. (過つは人の常、許すは神の業)を文字って、Errare è umano, perdonare è di vino.(過つは人の常、許すはワインの業)などと苦しい言い訳をしないように節度を持って楽しみたいものです。

 

ダンテ・アリギエーリ シエナ

ヴァンジンネケン

シエナの裏 「どんなお祭りが好きですか?」

Meglio una festa che cento festicciole.
どんなお祭りが好きですか?

Bancone.JPG こんにちは。8月のバカンスシーズンも終わり、こんがり日焼けして夏休みから戻ったイタリア人は今年はどんな休暇を過ごしたのかおしゃべりに花を咲かせています。そんな会話のキーワードは、故郷のお祭りや海辺のパーティーなどさまざまなfesteです。今回のお便りはfestaという言葉自体にスポットを当てみたいと思います!

 今年度のお便りのテーマになっているfesteという言葉。現代イタリア語での基本的な意味は「祝日、祭日、休暇、パーティー、祝宴、陽気な気分にさせるものごと」とされています。毎週やって来る日曜日domenicaも語源をたどればキリスト教のdominica dies(神の日)であり、労働日に対する安息日festaでした。現代イタリア語では祝祭日のほか日曜日もgiorni festiviとされ、それと対になる平日はgiorni ferialiと定義されています。

 
Coppa Mondiale.jpgもともとfestaという言葉はラテン語のfestus dies (儀式を執り行う日) が起源で、特別なお祝いをする日に捧げられた期間を指していました。本来festeには世俗と神聖を分ける役割があったといわれており、収穫祭、洗礼式、結婚式、など、一年という時間や人の一生の中である区切りをつけ、ある状態から別の状態への移行を象徴するものでした。日常的な労働日と特別な服や食べ物で儀式を行うfesteはいわば表裏一体となって、私たちの一生の時間を構成している大切な要素と言えるのです。

  さまざまなfesteは本来厳かに儀礼を行う神事の時間と賑やかな祝祭の時間の二つから構成され、儀礼によって人々は集団の秩序を再認識し、祝祭によって集団の一体化を強めると言われています。宗教的な起源を持つNataleやPasquaなどはもちろん、Epifaniaのように宗教的な意味が薄れたりMille Migliaのように全く宗教と切り離されたfesteも含め、現代でもfesteは人々を深く巻きこみ人々とのつながりを強く感じさせてくれる貴重な瞬間です。
 

Palio.jpg 悠久の歴史の中ではぐくまれた伝統が脈々と受け継がれ今なお強く息づくイタリア。祝祭を「お祭り騒ぎ」で祝うだけでなく、その由来に興味を持って楽しむと、festeをより深く堪能できることに間違いはありません!秋も収穫祭、芸術祭などさまざまなfesteが目白押し。イタリアの人々と共感する時間、festeの醍醐味をみなさんも堪能してくださいね! 

ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン 玲

シエナの裏 号外「シエナのパリオ祭」

こんにちは。夏も本番、太陽のまぶしい季節になりました! シエナでは、町のアイデンティティともいえるお祭りil Palio(パリオ祭)が近づき、人々の熱気がぐんぐん高まってきました。
世界的に有名なパリオ祭をいっそう楽しめるよう、今回の号外編ではシエナの町が誇るパリオについてお届けしたいと思います!

シエナと言えばパリオ、パリオと言えばシエナ

パリオ祭はシエナ市の企画運営する大規模なイベントです。毎年7月2日と8月16日の2回、 市の中心に位置するカンポ広場(Piazza del Campo)で行われる馬のレースのお祭りとしてよく知られています。
シエナの旧市街はコントラーダと呼ばれる17の地区に分かれており、各パリオごとに10コントラーダが馬のレースで競い合います。年間を通してシエナの人々の生活はコントラーダを基本に営まれており、パリオ祭はそのメインイベント。町とは切っても切れない関係があります。

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パリオ

パリオ祭の起源は13世紀にさかのぼると言われ、町の歴史と常に深いつながりを持ってきました。1260年のモンタペルティの戦いでシエナが勝利した際、聖母マリアに感謝の祈りを捧げるために祭りと馬のレースを行ったのが始まりと言われています。
シエナ共和国の黄金時代(13世紀初頭から14世紀半ばにかけての150年間)には、パリオは8月15日の聖母マリア被昇天を厳かに締めくくるお祭りでした。長い歴史の中でお祭りのスタイルは様々に変化し、いろいろな形式のパリオが行われてきました。

有名なのは14世紀初頭の長距離レース。シエナの町のいずれかの門をスタートし、大聖堂ドゥオーモがゴールがゴールとなっていました。時には騎手の乗っていない馬が走ることもあったようです。勝者には高価な織物でできた旗が贈られ、その旗がpalliumと呼ばれていたために祭り自体の名前がパリオとなりました。

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現在パリオ祭のレースは、特別に整備されたカンポ広場で開催されます。歴史装束を身にまとった人々の豪華絢爛な大行進に続いて馬のレースとなります。1回のパリオ祭に出場するのは10のコントラーダのみ。10頭の馬が広場のコースを3周して一番にゴールしたコントラーダが優勝旗パリオを手にします。
観覧方法は、広場の周りにめぐらされたベンチや広場に面する窓を予約するか(有料)、広場内で場所を確保して観覧するか(無料)の二つになります。いずれも入場できる制限時間があるので気をつけましょう!

コントラーダ

シエナの旧市街は3つの丘に沿って広がり、それぞれの丘によって町が3分割されています。この3区画はさらに17の区域に細分化することができ、この17区域がコントラーダと呼ばれます。もともとは中世の軍事的背景を基盤に59ものコントラーダが編成されていましたが、時を経るにつれ再編淘汰が進み軍事的機能を失っていきました。
しかし、コントラーダはただ地理的に町を区画するだけではなく、シエナの人々の魂を包括するような存在となりま した。洗礼、結婚、葬儀、パリオ祭、食事会、パーティーなど、コントラーダの担う役割は広く、人々の生活から切り離せません。

各コントラーダは動物などのシンボルを自らの名前として掲げています。 Aquila (ワシ)、Bruco (イモムシ)、Chiocciola (カタツムリ)、Civetta (フクロウ)、Drago (竜)、Giraffa (キリン)、Istrice (ヤマアラシ)、Leocorno (ユニコーン)、Lupa (雌オオカミ)、Nicchio (貝)、Oca (アヒル)、Onda (波)、Pantera (ヒョウ)、Selva (森)、Tartuca (カメ)、Torre (塔)、Valdimontone (雄羊) 。

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シエナの人々は、パリオが近づくと自分のコントラーダのスカーフを身に着けて生活します。

フランスの人類学者レビ=ストロースは、その様子を「Il fazzoletto è la bandiera personale dei senesi」と言い表し、シエナの人々が各々コントラーダの旗を掲げてパリオ祭に臨んでいるさまを観察しています。

お土産店で売っているスカーフを巻くときは注意が必要。スカーフを巻いて、ライバル関係にあるコントラーダの区域を通るとトラブルとなることがあるので気をつけましょう!

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お祭りをフルに楽しもう!

一般的なパリオ祭のイメージは7月2日と8月16日の馬のレース。確かに興奮が頂点に達するまたとない瞬間ですが、それだけを観るなんてもったいない! パリオ祭の醍醐味はその前後にあると言っても過言ではありません。パリオ祭当日までの熱い熱い3日間をご紹介するので、ぜひ足を運んでみてください!

6月29日と8月13日@カンポ広場: 馬の選出と抽選
パリオ祭に出場する10のコントラーダと10頭の競走馬の組み合わせを決める。早朝から馬の選出開始。午後はパリオ祭に出場する10のコントラーダによる抽選。

6月29日~7月3日と8月13日~16日@カンポ広場: 試走
パリオ祭の3日前の夕方から当日の朝まで全6回(朝は9時ごろ、夕方は7時半ごろ)。特に盛り上がるのは祭り前日の夕方に開催される第5回目の試走 “prova generale” 。

当日午前@カンポ広場: ジョッキーの祈祷、最終試走など
午前8時ごろから開始。市庁舎に隣接する礼拝堂で大司教によりジョッキーへの祈祷に続き、”provaccia” と呼ばれる最後の試走が行われる。

当日午後@旧市街各所: 馬の洗礼、大行進など
午後3時ごろから各コントラーダの礼拝堂で馬の洗礼。その後、中世の衣装に身を包んだコントラーダの代表やシエナ市の代表が旧市街を行進し、ドゥオーモ広場に集合。大聖堂正面あたりで各コントラーダの旗手が旗をふるパフォーマンス。

当日夕方@カンポ広場: 各種行進、レース
午後5時ごろには、イタリア国防省の騎馬部隊による行進。続いて豪華絢爛な衣装が圧巻の行進il Corteo Storicoが開始。行進が終わるとすぐにクライマックスのレース。

当日夕方@カンポ広場~各教会: 賛歌テ・デウム
パリオ旗の授与後、優勝コンラーダは神へ感謝の歌テ・デウムを捧げに教会へ向う(7月のパリオ祭はProvenzano教会、8月の場合は大聖堂ドゥオーモ)。優勝したコントラーダの地区での祝宴。コントラーダの教会では、飾られたパリオ旗を見学することができる。

120629試走.jpgイベントが目白押しのパリオ祭。私たちには想像も及ばないほど、シエナの人々にとってパリオ祭はとても神聖なお祭りです。普段は絶対的に安全な町ですが、祭り前後は緊張や興奮から気が立っている人も少なくないので、要らぬトラブルを避けるためにも不注意な言動や行動には気をつけましょう。
世界中の人々がパリオ祭を一目見ようと集まってきますが、「祭りの主役はあくまでもコントラーダに属するシエナの人々」ということを頭の片隅に置いておくと、一層楽しく深くお祭りを味わうことができるはずです。 また、日中は日差しも強く かなり暑くなるので、日射病や熱中症の対策を万全にして楽しく見学してくださいね!

ダンテ・アリギエーリ シエナ校
ヴァンジンネケン 玲