1/25(土)文化セミナー シリーズ「著者に聞く」第2回『システィーナ礼拝堂を読む』 (河出書房新社)の著者の1人、松浦弘明先生に聞く』ご報告

matuuraseminar文化セミナー「著者に聞く」シリーズ第2回は、イタリア・ルネサンス史に燦然と輝くシスティーナ礼拝堂についてその内部を飾る無数の作品群に秘められた謎を本書の著者のお一人である松浦先生に、映像を見ながら、語っていただきました。参加者36人。


「システィーナ礼拝堂装飾について書かれた書籍は数多く存在している。しかしながら、それらの大半が美術史の学者向けの極めて専門性の高いものか、さもなければ実に簡略な旅行ガイドになっている。ガイドブックの説明では満足できない、より深い知的情報を得たいと願う愛好家のために書かれた。」(本書あとがきから)


sistine本書の発行の裏話から始まって、システィナ礼拝堂(正しくはシスト礼拝堂と訳すべき)の全体の紹介をしていただきました。通常は「最後の審判」の祭壇画と「天地創造」の天井画に注目が行きますが、特に松浦先生が執筆を担当された側壁の「キリスト伝」と「モーゼ伝」の連作は、礼拝堂の創建当初からある重要な一部であり、選ばれた場面の構成や内容がわかりにくいところを、側壁のラテン語銘文から「キリスト伝」と「モーゼ伝」の向かい合う壁画がタイポロジーから同種の主題を扱っていることで解き明かされました。さらにタイポロジーはその頭上の天井画にもつながることを一例をあげて説明されました。何しろ大学の授業では90分×15回分相当するシスティナ礼拝堂を90分ほどで駆け足でご説明いただきましたので、あとはこの著書を読むことで補いましょう。


<講師プロフィール>

1960年岐阜県生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科を卒業後、イタリア政府給費留学生としてフィレンツェ大学へ留学。帰国後、順天堂大学非常勤講師などを経て現在、多摩美術大学教授。日伊協会でイタリア美術史とイタリア語の講座を担当。主な訳書に、『イタリア・ルネサンス美術館』、(東京堂出版・2011年)、『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界』(共著/東京堂出版・2007年)などがある。