坂本鉄男 イタリア便り 聖職者の逮捕

去る9月下旬、ローマ法王フランシスコは、複数の少年に性的虐待を加えた疑いでドミニカ共和国の警察から告発されていた、バチカン市国の前駐ドミニカ共和国大使ヨゼフ・ベゾロフスキ元大司教(66)を逮捕することを許可した。

ポーランド出身の元大司教は今後、法王庁裁判所で裁判にかけられ、有罪の場合は7年から10年の禁錮刑になる可能性もあるといわれている。

だが、カトリック教会の大司教で大使だった高位聖職者が逮捕されるという事件は前例がないだけに、バチカン市国内には衝撃が走っている。

欧米では、十数年前から聖職者による未成年者に対する性的虐待が重大な問題になっている。

カトリック教会内の浄化と聖職者の規律の厳正化を進めている法王は今回、断固たる態度を示すことで、一向に後を絶たない聖職者による性的虐待の防止に不退転の決意を表明したのだ。

カトリックの聖職者の妻帯禁止は、11世紀の法王グレゴリウス7世により成文化されたが、その後の法王の中には愛人と子供を持った者もいたことが歴史的に知られている。

カトリック教会の聖職者は男子に限られているだけに、問題の根は深いといわざるを得ない。

坂本鉄男

(2014年10月5日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)