坂本鉄男 イタリア便り

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坂本鉄男 イタリア便り ヒダラ料理

イタリアには、南から北まで各地にそれぞれ“お国自慢”の干鱈(ひだら)料理がある。塩をまぶしてカラカラに干し上げた干鱈を、きれいな流水で3日くらいかけて戻すのはプロの仕事だ。家庭では食料品店や専門店で戻されて料理するばかりになった干鱈を購入するのだが、その揚げ物はクリスマスの食卓を飾る季節の一皿でもある。 この干鱈、イタリア語で「バッカラ」とも呼ばれ、約500年の歴史を持つのだが、実は北欧ノルウェー.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 「無原罪の御宿り」と「受胎告知」の誤解

12月8日はカトリック教徒にとって重要な「無原罪の御宿り」の日で、かつてカトリックを国教としていたイタリアでは今も祝日である。 旧約聖書によると、人間の始祖アダムとエバは、神の命に背きヘビに誘われて「禁断の実」を食べ(つまり原罪を犯し、現代風に言えば性交をして)楽園を追われ、以後、アダムとエバの子孫の人間は子供をつくり汗水流して働かざるを得なくなったとされている。 一方、神の母である聖母マリアは原.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り ワイン世界一の伝統 今年も味は最高

今年もワインの季節が近づいてきた。イタリア産の生産量は47億2千万リットルと例年をやや下回る予想だ。原因は主要産地のシチリア島と中部トスカーナ州の酷暑と雨不足のためという。 それでも、例年のごとく2位のフランス、3位のスペインを上回るのは間違いない。人口約6千万人のイタリアで飲み切れるのかと思うが、ワインはイタリアの主要輸出品で2019年度は64億ユーロ(約7940億円)を稼いだ。特に米国、ドイツ.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 貧困問題を憂う

貧困の定義は複数あるが人間として最低限の栄養や衣類、医療、住まいなどの生活水準を維持することが困難な状態を「絶対的貧困」というそうだ。こうした貧困層は、先進7カ国(G7)の一員であるイタリアにも存在し、2019年の絶対貧困家庭は約170万世帯、人数にすると約460万人に上るという。 今年は新型コロナウイルス禍で職を失ったり収入が減ったりし、昨年より絶対的貧困に陥る人が増えるのではないかと懸念してい.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 遺児の世話、誰がする

昔は目立たなかった「女性殺し」が今や世界各地で続発している。イタリアでも新聞を開けば、「夫による妻殺し」「前夫による前妻殺し」「別れた彼氏による元の愛人殺し」「ストーカー殺人事件」「同棲(どうせい)女性殺し」の見出しが目に飛び込んでくる。事件の背景や原因の分析は犯罪心理学者や社会問題の専門家に任せるとしても、殺された女性の遺児の世話は誰がするのだろうか。 日本にどのような法律があるのかは知らないが.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 「カニもどき」を本物と思って食べる

昔、東京の国立大学で教鞭(きょうべん)をとっていた頃の話である。わが家の夕食にイタリア人の教師と、大学卒業後、大手商社に入社した教え子がやってきた。 話が弾み、商社マンの仕事が話題になった。「カンガルーの輸入です」と商社マン。「え、今なんとおっしゃった。日本の動物園はそんなにカンガルーが好きなのですか」とイタリア人。「ご存じないのですか。ソーセージに混ぜるための肉ですよ」。イタリア人は、日本でソー.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 能とオペラの共通点 日本文化説明の難しさ

数年前、ブームに乗って日本を旅行し、偶然、能を見たという若いイタリア人夫婦の訪問を受け、質問攻めにあった。さほど詳しくはないが、むげに断れない。先方は、日本人なら詳しいと思い、頼っている。 第1問は「劇場内に屋根と柱のある能舞台を造るのはなぜか」。よく観察していると感心しつつ、「昔は舞台の建物と観客の建物が別であったことの名残である。柱は、シテ(主役)が面をかぶり視界が広くないため目印の役目を持つ.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り ナポリの一品 馬車に乗ったモッツァレラ

ピザなどナポリ料理に欠かせない材料の一つがモッツァレラだ。水牛の乳で作られる生チーズで、牛乳で作られるフィオール・ディ・ラッテと比べ、ずっとおいしいし、値段も高い。<br /><br /> 水牛にはアジア種とアフリカ種があり、5世紀ごろにアフリカ種がイタリア南部、特にナポリから南下した場所にあるサレルノ地方に持ち込まれ、モッツァレラが特産物となった。気候変動による平均気温の.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 漁師の健康料理「アクアパッツァ」

イタリア語の料理の名前は、日本人にも発音しやすく、そのまま日本語として使われることが多い。アクアパッツァもその一つ。 アクアは「水」、パッツァは「奇妙な」とか「暴れた」を意味するが、なぜパッツァを用いるのか、その語源は定かでない。イタリアでは「塩水で味付けする、ごく簡単な料理」程度の意味に捉えられている。 もともと南部の港町ナポリの漁師料理として19世紀から存在した。有名になったのは、第二次大戦後.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 人気料理と画家 「カルパッチョ」の起源

日本でも人気の生魚を薄切りにして調味料を加えたイタリア料理「カルパッチョ」は、もともと、「新鮮な牛の生肉の赤身の薄切りに、ごく薄切りのチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノをかけたもの」であった。 元祖とされるベネチアのレストラン「ハリーズ・バー」創業者のジュゼッペ・チプリアーニ氏によると、起源は1950年。食事制限で「加熱した肉料理は食べられない」と常連客の婦人が話すのを聞き、提供したのが始まりだ.... Read more