坂本鉄男 イタリア便り ワイン世界一の伝統 今年も味は最高

今年もワインの季節が近づいてきた。イタリア産の生産量は47億2千万リットルと例年をやや下回る予想だ。原因は主要産地のシチリア島と中部トスカーナ州の酷暑と雨不足のためという。

 それでも、例年のごとく2位のフランス、3位のスペインを上回るのは間違いない。人口約6千万人のイタリアで飲み切れるのかと思うが、ワインはイタリアの主要輸出品で2019年度は64億ユーロ(約7940億円)を稼いだ。特に米国、ドイツ、英国がお得意さまだ。今年も味の方は「最高」と言うから安心だ。

 ところで、イタリア国民1人当たりの年間消費量は過去40年間で100リットルから40リットルに半減した。食事や社交にかける時間が減り、嗜好(しこう)も変化したためだといわれている。流通の仕組みの変化により手ごろな価格で買えなくなったとの説もある。

 確かに、昔は空瓶を持って近くの酒屋に行き、生産農家から直接送られてくる大きな樽(たる)からワインを注いで購入していたが、最近はスーパーマーケットで瓶詰めワインを買っている。仲介業者が間に入り値段が上がったとすれば、残念だ。

 生産者にとっての吉報は最近4年間の消費量が連続して上昇し、消費者が国民の54%に達したことだ。やはりイタリアの伝統料理にワインは欠かせない。その伝統が失われることはないのである。

坂本鉄男

(2020年10月27日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)