坂本鉄男 イタリア便り 貧困問題を憂う

貧困の定義は複数あるが人間として最低限の栄養や衣類、医療、住まいなどの生活水準を維持することが困難な状態を「絶対的貧困」というそうだ。こうした貧困層は、先進7カ国(G7)の一員であるイタリアにも存在し、2019年の絶対貧困家庭は約170万世帯、人数にすると約460万人に上るという。

 今年は新型コロナウイルス禍で職を失ったり収入が減ったりし、昨年より絶対的貧困に陥る人が増えるのではないかと懸念している。日本の状況はどうか。

 話は古くなるが、松尾芭蕉が1685(貞享2)年に完成させた『野ざらし紀行』には、富士川のほとりで3歳ぐらいの捨て子が泣いているのを見て、短い命の糧にとわずかの食べ物を与えて去る場面がある。340年近く前の日本ではよくある光景だったらしいが、今は昔の話と言い切れないのが悲しい。

 日本では、世帯所得が全世帯の中央値の半分未満である人々を「相対的貧困層」としている。厚生労働省によれば、2015年の日本の子供の相対的貧困率は13・9%。ひとり親家庭の相対的貧困率は50・8%で、先進国の中ではかなり悪い水準だ。

 貧困に追い詰められた親が虐待や育児放棄に至るケースも多いと聞く。コロナ禍の今年、イタリアから日本の行く末が気になる秋である。

坂本鉄男

(2020年10月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)