坂本鉄男 イタリア便り 大統領年俸をはるかに超える「労働貴族」 絹ワイシャツとカシミヤセーター

イタリアの3大労組の1つで公称組合員数437万人のCISL(労働者組合総同盟)の書記長ら大幹部の高額報酬が内部告発され、問題になっている。

それによると、ラファエロ・ボナンニ前書記長の年額報酬は、2006年の書記長就任時は11万8千ユーロ(約1600万円)、11年の退職時には33万6千ユーロ(約4500万円)で、大統領年俸をはるかに超える額に達していたという。彼は退職後の自分の年金を高額にするために最終報酬をお手盛り増額したらしい。

イタリアの労働組合の保有財産および経理内容は公表されることがなかったが、莫大(ばくだい)な資産と年間予算を持つと推定されている。

これまでも、最左翼で最大労組CGIL(労働総同盟)の元書記長は政界に進出して左翼政党の幹部になってきた。例えば、1970~80年代の過激な組合運動を指導したベルティノッティ氏は、政界に転じてから下院議長を務めたほか、共産主義再建党のトップにまで上り詰めた。彼は組合幹部時代から「カシミヤのセーターと絹のワイシャツ着用」で知られていた。

日本でも労働組合幹部から国会議員に転じる人々は多いが、乏しい給料から組合費を払って彼らを支えている一般組合員は、書記長以下幹部の俸給や手当てを知るべきだと思う。

坂本鉄男

(2015年10月11日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)