坂本鉄男 イタリア便り わが国も難しい条件付けず東南アジアから家政婦を導入すると良い

 日本のように公立病院や各種の医療設備が整っておらず、公的介護サービスなども存在しないイタリアでは、自宅で最期を迎える人が多い。高齢者所帯の多いわが家のマンションで、この6年間に亡くなった5人の老人も皆そうだった。

 一昨年、86歳で亡くなった隣家の主婦の場合、180平方メートルの家の1部屋を病室に充てていた。病状のひどいときには1週間程度病院に入院したが、それ以外は自宅に酸素吸入器を持ち込むなどして、ご主人と住み込みの家政婦が最後まで世話をしていた。

 今は1人になった93歳の元建築家は、昼間は通いの家政婦が面倒を見て、夜は用心のため学生アルバイトが泊まっている。

 日本と違い、イタリアではフィリピン(この国の出身者は正直な点で定評がある)、アフリカ、東欧からの外国人家政婦(家政夫も多い)が簡単に見つかる。

 普段、町を散歩している高齢者も、こうした外国人家政婦や家政夫に付き添われている人が多い。家政婦を住み込ませるスペースがない場合は、通いの家政婦を雇えば解決できる。

 わが国でも、難しい資格や条件を付けずに東南アジアから大勢の家政婦を導入すると良いのではないか。そうすれば、国の医療負担も大きく減るに違いないと思うのだが。

坂本鉄男

(2016年6月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)