blog「Tuは何しに日本へ?(Perché sei venuto in Giappone nel 2016?)2016年版
8/18 ホストファミリー受入れ」

今年の夏もイタリアから13人の大学生が日伊協会にやってきました。彼等の目的は「日本語・日本文化講座*」受講。午前中は日本語特訓、午後は茶道、書道、華道といった伝統的な日本文化から、現在の日本のカルチャーや世界で活躍する日本企業の会社訪問まで、今の日本を体験、学習して、暑い東京の夏をより熱く過ごします。

このブログはイタリア人大学生が自分達の目で見、聞き、体験したことを自分達の言葉(日本語とイタリア語)で綴るリレーブログです。(原稿は基本的にそのまま掲載しております。固有名詞表記のみ補足)

今回はホストファミリーをしていただいている関さんから原稿を頂きました。関さんは日伊協会のHPで「マンドリン通信」を連載中ですので、そちらの方もご覧いただけると、今回のホストファミリー受入れの経緯がよく分かると思います。

<日本語・日本文化講座スタート>
2016-08-18-1-01
今年で6回目という、イタリア人のための「日本語・日本文化講座」が7月25日から始まりました。私はマンドリンを通じて知り合った、友人の息子さんのエマヌエレが大学で日本語を専攻していることから、この講座を勧めて参加することになりました。勿論、私がホストファミリーとして受け入れました。この友人と知り合ったあと,毎年その家族と親しくなり、私が日本人であることから、当時13歳だったエマヌエレは日本に興味を持ち、やがて大学で日本語を専攻したのです。現地では、日本語を話す機会が少ないので、この1か月は彼にとっても日本を知る貴重な経験になるだろうと考えました。

来日して講座が始まり、気の合うクラスの友人達と渋谷、表参道、原宿、新宿、ゲームセンター、ハードロックカフェ、東京タワー、カラオケ、Bookoffでの安価な本の購入など次々と東京を体験していく、そのスピードには脱帽でした。文化講座では華道・書道・茶道といった日本の伝統文化を体験したり、会社訪問で日本の会社の活動や社員の働き方を、実際その眼で見て知ることが出来たと思います。
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エマヌエレは、ピアノの弾き語りとアートが大好きで、幼いころから絵を書くのが上手でした。今回の書道の講座で選んだ言葉は「音楽」。家に戻って見せてくれた色紙の文字は、日本人でもこんなには上手く書けないであろうという素晴らしい「書」でした。力強く、しっかりとした文字に彼の音楽に対する思いが込められているのを見て、正に書道の心に通じていると感心しました。以前は日本を殆ど知らなかったですし、余り日本語は話せませんでしたが、実際に日本に来てからは自分が「お寺・神社、仏像」に興味があること、イタリアで読んだ好きな日本の作家、村上春樹氏の日本語の本を将来読めるようになるために買い たいこと、などと日本での滞在目的を次第に明らかにしていきました。

<感動した日本語の作文>
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ある夜、いつも通り一緒に復習していた時、「イタリア料理を紹介する」という作文を書かなくてはならないが、何を書いていいかわからないと彼は言いました。料理の名前の意味とその料理が自分にとってどういうものか?を書かねばならないそうです。彼のお母さんは料理が上手なので、いくらでもあるでしょう?と言うと沢山あるので選びようがないと言いました。私は、誕生日やクリスマス、試験に受かった時とか、母親が、彼のために心を込めて作ってくれた料理が絶対あるはずだと言い、良く考えて、1人で書いてみなさいと言いました。

その20分後、呼ばれて行くと読み始めました。私は最後まで聞いたら、涙が出そうになる位に胸が一杯になりました。彼は、クリスマスに母親が作る「Struffori」というナポリ地方の伝統的なお菓子を紹介しました。母親がそれを作るのが好きで、彼にとってとても大事なお菓子だという最後のフレーズは、正に彼が母親を思って表現する言葉を日本語で表したのです。

私はクリスマスに彼の家に行ったことがあり、彼の母親が作るクリスマスの料理を全部いただきましたので、勿論その光景が目に浮かびました。皆の笑顔とその料理すべてが愛情こもった素晴らしいものであったからです。南イタリアの気さくで、豪快で、開けっ広げの習慣が彼らの魅力であり、一人外国人で ある私を暖かく歓迎してくれる心の広さが私は大好きなのです。

<日本の習慣やルールに対する疑問と質問>
2016-08-18-1-02
ある日の午前中の文化講座で、相撲部屋の練習見学があり、私も参加しました。練習後力士さんが出て来てくれ「Picture ok!」と分かり易い合図(^^)。外国力士(ロシア)さんも色々質問に応じてくれてました。

夕食の時に、エマヌエレが「どうしてあんな朝早くから練習しなければならないのか?」という質問に、日本の相撲はスポーツではなく、伝統武道であり稽古は修行で、出世しないとお金を稼げないこと、特に外国力士は親を養うために遥々来ていて、その試練に耐えないと高い給料を得られないと言いました。理解したかはよく分かりませんが。

その後、日本とイタリアで異なることで、いくつか質問を受けました。まず最初は「何故日本人はマスクをするのか?」次に、「何故、トイレにペーパータオルがないのか?」そして、「何故町にゴミ箱がないのか?」です。

ゴミ箱については、 地下鉄サリン事件の話をして、その後全ての駅からゴミ箱が撤去されたこと、そしてその後は個人のゴミは極力自分の家に持ち帰るルールに変わったことを話しました。ペーパータオルも同様でゴミを増やさないためです。彼は、それらがないことを不便だと言いつつも「東京の町にはゴミ箱がなくて、車が多いにも関わらず、道路にはゴミが捨てられておらず綺麗だ」と分かってくれていました。

イタリア人は宵っ張りですし、エマヌエレも夜出かけたがりますが、必ず23:30に家に到着しないとダメだときつく言い渡しています。親から預かっている大切な息子さんに何かあっては大変です。今の所時間は守っていますが。今回のホームスティはかなり長いかなと思っていま したが、あれこれと彼との生活を忙しく過ごしているうちに、あと1週間でこのプログラムが終了します。日伊の違いだけでなく、少しでも欧米とはかなり異なる日本特有の文化を理解して、イタリアに帰ったら貴重な体験話をイタリア人にしてほしいと願っています。

*「日本語・日本文化講座」には日本からイタリアへ文化発信する事業に助成することにより、日伊双方向の交流促進を目的として設置された日伊文化奨励基金の一部が活用されています。