坂本鉄男 イタリア便り 入れ墨は市民のおしゃれ? ローマ市だけで工房900軒

イタリアでは、タトゥー(入れ墨)は「怖いお兄さん」たちだけがするものと思う時代は過ぎ去り、一般市民のおしゃれの一種になってきた。プロサッカー・セリエAの試合を見ていても、ひじょうに多くの選手が腕に大きな入れ墨をしているし、テレビのクイズ番組に出場する奇麗な娘さんの中にも、肩や腕に小さな入れ墨をしているのを見かけることが多くなった。

最近の地元紙の報道によると、ローマ市だけで実に900軒の入れ墨工房があり、世界の大都市の中でも人口の割合に比べこれほど入れ墨工房が多い都市は少ないらしい。

有名サッカー選手を顧客にしているような彫師になると、半年から1年先まで予約がいっぱい。2~3時間で彫り終わる小さな入れ墨でも代金は200ユーロ(約2万4千円)以上はするという。

また、有名な入れ墨工房では、彫ったことを後悔する顧客のために除去手術の専門家も紹介するというが、レーザーによる施術料はかなり高いようだ。

なにしろ、民間テレビで外国の入れ墨師コンクールを絶えず流しているのだから、今後も入れ墨ブームは盛んになるばかりだろう。

新聞によると物価統計に、彫り物代が入るかもしれないというから驚きである。

坂本鉄男

(2017年5月7日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)