坂本鉄男 イタリア便り オトコたちに朗報?

離婚の原因は洋の東西を問わず男性側の浮気がいちばん多いようだ。これまでのイタリアだと、ある程度資産家の男性に非がある場合には「元妻が死ぬまで、結婚生活時の水準を維持していくだけの扶養費を支払い続けるか、それに見合う金額の慰謝料を支払うこと」が離婚調停の成立条件の一つになることが多かった。

 例えば、イタリア有数の資産家であるベルルスコーニ元首相の場合も、長年連れ添ったベロニカ・ラリオ元夫人に対し法定別居期間中の扶養費として、1審では広大な屋敷など不動産のほか、月々300万ユーロ(約3億7千万円)を支払うよう命じられた。あまりに高すぎるとして訴えた最高裁判所でも、つい最近、減らされたとはいえ月々200万ユーロの支払い判決を受けた。

 さて、同じ最高裁は、去る5月に「離婚の慰謝料は、元妻に経済的余裕がある場合にはこれを勘案して定める」との革命的ともいえる判決を下した。イタリアでは離婚に伴う慰謝料支払いのため夫が住居を売り貧しい暮らしに陥っているケースが多いだけに、当事者の男たちにとっては“福音”ともいえる内容にちがいない。

 一方で元首相のように高額な扶養費を支払っている金持ちが、減額を求め法的措置に訴える事態も予想される。

坂本鉄男

(2017年6月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)