坂本鉄男 イタリア便り 落書き退治

 イタリアの都市を訪問した経験のある方は、商店の壁やシャッター、橋の欄干から電車やバスの車体に至るまであらゆる所で大きな落書きをごらんになったに違いない。ごく最近もローマのユダヤ教会の歩道にある犠牲者の記録を彫った敷石をスプレーで汚した不届き者がいた。

 こうした損害は非常に大きく、壁や車両の落書きを消す費用だけでも全国で年間7億5千万ユーロ(約922億円)もの巨額に上ると推定されている。国全体にとっても大きな問題だが、スプレー式塗料をもった犯人たちは神出鬼没でなかなか捕まらない。

 ミラノ市では、すでに3年前から罰則規定を設け、これまでに52人を告発し112人に罰金を科してきた。ローマ市でも、去る2月上旬からやっと落書き退治が本格的に始まった。

 ローマ市の罰則は、160ユーロから300ユーロ(歴史的あるいは宗教的建造物の場合は500ユーロ)の罰金と、15日以内に落書きを消す義務を課すほか、未成年者にスプレー塗料(落書きの80%以上はこれによるもの)を販売した業者には1千ユーロの罰金を科すことも定めた。

 だが、1カ月以上たつのに犯人は1人も捕まらない。今どき無理な話だとは分かっているものの、若者に公徳心を植え付ける良い方法はないものかと思ってしまう。

坂本鉄男
(4月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)