坂本鉄男 イタリア便り 夫の産休の権利

 日本の民主党政権は、児童手当の増額や教育手当てなどをスローガンにして、働く女性の援助、ひいては少子化対策を金銭上で解決しようとするが、社会的な根本的改善がもっと必要だ。

 イタリアでは働く女性が妊娠した場合、日本より手厚い保護を受けている。

 まず、出産予定日の前は2カ月の休暇が認められ、出産後は3カ月の休暇が認められる。

 また、もし妊婦が8カ月目までの勤務を希望すれば、1カ月が産後に繰り延べされる。つまり出産前後で合計5カ月の休暇だが、これは妊婦の身体の保護と産後の母体の保護が目的で、産休は権利より義務である。このほか、幼児が1歳になるまでは給料は減額されても育児休暇が認められている。

 また、いくら男性は妊娠しないとはいえ、配偶者の妊娠には逃れることができない責任があるのだから、産後の妻に代わって家事や育児の手伝いぐらいの義務はあるはずだ。

 義務があれば権利もあるわけで、イタリア全国社会保険公社(INPS)は、たとえすべての夫が権利を行使しないにせよ、建前上は妻の出産後6カ月までの夫の有給休暇(給料の30%支給)を認めている。

 仕事人間の多い日本では到底無理だとしても、働き、しかも育児をする女性を助けるためには、「夫の産休の権利」を問題にし始めてもよい時期だと思うのだが。

坂本鉄男
(6月6日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)