坂本鉄男 イタリア便り 老樹調査

 イタリアでは自然環境保護団体のひとつが「自然の長老(パトリアルク)の調査と記録」というのを行っている。

 「長老」とは旧約聖書のユダヤ人12部族の族長の名称から取ったもので、ここでは全国に残る老樹のこと。記録されている老樹は北はアルプスの麓から南はシチリア島までを含み、総本数5327本が各州ごとに分類され、各樹木には、それぞれの存在場所、樹種、樹高、太さ、推定樹齢などが記録されている。

 さて、イタリア最長寿の樹木は、コルシカ島(フランス領)の南にあるサルデーニャ島にあるオリーブで、推定樹齢3800年、樹高11メートル、太さ13メートルだという。

 オリーブの木が最高樹齢とはいかにも地中海文明の地らしい。

 2番目は、シチリア島のエトナ火山の麓に生える推定樹齢3000年のクリの木で、樹高13メートルだという。降雨量の少ない地中海沿岸だけに、樹齢が1000年を超すものは少なく、水分を多く必要としないオリーブの古木が多いのも特徴といえよう。

 例えば、ナポリの近くの推定樹齢1600年のオリーブの木も、当時、巡礼がキリスト受難の地エルサレム近郊のゲッセマニ(ヘブライ語でオリーブ油を搾るの意味)の園から種を持ち帰って植えたといわれる。

 「みどりの日」をはじめ、「植樹祭」、「植林」など樹木に関心が多いわが国には、もちろん、こうした老樹の全国的な記録はあると思うのだが。

坂本鉄男
(7月25日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)