連続文化セミナー『文明の交差路~シチリア』ご報告

第5回 シチリアと映画―内なるシチリア、外なるシチリア
文化的に多様な顔を持つイタリアにあってシチリアはひときわ複雑である。そのシチリアの歴史と文化をより掘り下げて知る機会を持つために企画された連続文化セミナー『文明の交差路~シチリア』は、第5回として、6月22日(土)に、「シチリアと映画―内なるイタリア、外なるシチリア」と題して、映画評論家・東京大学教養学部非常勤講師の岡本太郎先生に映画のお話を伺った(参加者36名)。
取り上げられた映画は、6本。ルキーノ・ヴィスコンティ『揺れる大地』、『山猫』、ミケランジェロ・アントニオーニ『情事』、ロベルタ・トッレ『キスを叶えて』、ダニエーレ・チプリ『それは息子だった』、エマヌエーレ・クリアレーゼ『海と大陸』であった。
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シチリアは、巨匠たちの時代から映画作家にとってきわめて重要なロケーションであり、インスピレーションの源だった。シチリア出身でない巨匠たちの視線とシチリア出身の作家たちの描写の比較もシチリアに対する内外からの映画のまなざしとなって現れるので興味深いものがある。
イタリア映画における風景の役割は登場人物と対等あるいはそれ以上のものがあり、物語のバックグラウンドとしての“静的な”存在感や物語の展開に関わる以上に人間たちの運命に働きかける存在である。そしてそれは、シチリアにおいてその風土の多様性と地域性から一段と重要な意味を持つに至っている。漁師の表情さえもが、さすらいの心象風景として描かれる場合もある。

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短い時間にもかかわらず6本の映画から画面をとり出しながら、以上のようなシチリアと映画の関わりを多面的に、かつ、重層的に解説していただいた今回の講演は古今のイタリア映画に通暁する講師ならではの講演であった。

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