坂本鉄男 イタリア便り 神様よりお見通し?

 ビデオカメラによる監視は最近、犯罪捜査に強力な効果を発揮しているが、街角以外でも役に立った話を一つ。

 近くカトリック教会の聖人に列せられる法王ヨハネ23世(在位1958~63年)の生まれ故郷、イタリア北部ベルガモ市近くのソット・イル・モンテ村の教会の司祭ドルチーニ師は、3年前に赴任した際、10年前からの教区の帳簿を調べて驚いた。総額約100万ユーロ(約1億4千万円)の使途不明金を発見したのだ。

 カトリック教会の近代化に大きな功績を残した元法王の生誕地を訪れる巡礼者の賽銭(さいせん)や寄付金は確かに多いが、この不明額は大きすぎる。地元出身の秘書兼会計係に問いただしても、らちが明かない。直ちに寄付金に領収書を発行する措置を取ったところ、なんと前年比で3倍の収入になるではないか。

 しかし、まだ使途不明金が生じる。そこで司祭は昨年2月、ひそかに教会内にビデオカメラを設置し、監視を始めた。すると、なんと例の会計係が夜半に忍び込み、ろうそく代金箱から金を懐に入れているのを発見。ろうそく代とはいえ、「塵(ちり)も積もれば山となる」である。

 元法王が聖人になると巡礼者が激増すると予想されるだけに、その前に犯人が判明し、一件落着となった。

坂本鉄男

(2014年2月23日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)