坂本鉄男 イタリア便り 地獄の沙汰も金次第

 イタリアのベルルスコーニ元首相(77)は、自身が所有するテレビ会社の脱税事件に絡んだ裁判で、昨年8月に最高裁から禁錮4年(恩赦法により1年に減刑)を言い渡され、その後、上院議員の資格も失った。

 だが、弁護団側は被告が高齢のため、1年の刑の代替として法律で定める社会奉仕を申請。裁判所はミラノ市近郊の老人施設で週1回、連続4時間の奉仕活動を約10カ月間行うことを認めた。老人施設は、ミラノ近郊の元首相別邸から車ですぐの所にある。1年間の刑の代替の週1回4時間の奉仕活動は、総計では約170時間にすぎない。

 また、裁判所は各週の火曜日から木曜日まで、ローマへの移動許可も与えた。これは、自分の政党「フォルツァ・イタリア」の立て直しなど政治活動が可能なことを意味する。元首相は早速テレビ番組でレンツィ内閣の政策に揺さぶりをかけ、ナポリターノ大統領についても、「自分に特赦を与えなかった」などと非難するありさまだ。

 今回の裁判を「自分を陥れようとする左翼検察の陰謀」と公言してきた元首相は、莫大(ばくだい)な資金力と強力な弁護団に囲まれ、検察がいくら不正を暴いて起訴しても、裁判の引き延ばしで時効になることが多い。結局、元首相は不死身なのである。

坂本鉄男

(2014年5月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)