坂本鉄男 イタリア便り ヌーディスト海岸

ヌーディズムとは、物質的・科学的文化に影響され、自然との接触が途切れてしまった現代社会に反発し、19世紀末からドイツを中心に起こった運動といわれている。

イタリアのお国柄は“保守的”とされ、ヨーロッパ諸国の中でヌーディストの数が少ないとされるが、それでも約40万人はいるという。また、ヌーディスト専用の海岸も、決して多いとはいえないまでも、北部から南部シチリア島まで各地に存在する。だが、それらの専用海岸は人目から遮断され、他人が簡単に入って来られないようなものでなければならない。

実際、数年前にシチリア島の景勝地タオルミーナにあるヌーディストの集まる海岸で、全裸で日光浴をしていた男性が、「人目から隔離されていなかった」との理由で1200ユーロ(約16万4千円)の罰金を科せられた。

日本には「夏だ、海だ」と言って、裸で海に飛びこむ人は少ないだろう。これは、浴場などを除き人の目につく場所で裸体になると、刑法の「公然わいせつ罪」で罰せられる可能性が高いからだ。

夏だから、そんな堅い話はやめにして、などと思わないように。海外に旅行しても、羽を伸ばしすぎてはいけません。どの国にも法律と文化というものがあるのだから。

坂本鉄男

(2014年7月20日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)