坂本鉄男 イタリア便り 高くつく「若気の至り」

サッカーW杯ブラジル大会を見ていて、入れ墨をした選手の多さに驚いた。イタリアでも若者の間に入れ墨はかなり流行している。

だが、ある有力全国紙に次のような記事が載っていた。「入れ墨をした人の約30%がなんとか元の皮膚に戻したいと考えていて、特に40歳から50歳の女性に『若気の至り』と後悔している人が多い」と。

たしかに、初恋の彼氏や彼女への愛情の証拠として名前を彫り、矢の刺さった赤いハートまで添えている若者が多い。だが、その恋人と別れてしまえば、新しい恋人、あるいはご主人や奥さんの前で、初恋か何代か前の恋人の名前の入れ墨を腕や肩に背負うはめになる。

入れ墨は就職でも問題となる。警察官、軍人などの就職規定には「夏の正装着用の際、入れ墨が人の目に触れないこと」の規定があり、そのような職種を目指すなら、入れ墨を除去する必要に迫られる。

さて、入れ墨の除去の値段だが、最近はレーザー光線による痛みを伴わない色素除去法があるそうだ。小さく、色も1種類の入れ墨なら200ユーロ(約2万7600円)。だが、大きくて多色のものになると、1色ずつ除去するため非常に多くの時間と費用がかかるという。「後悔先に立たず」とはこのことだ。

坂本鉄男

(2014年7月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)