坂本鉄男 イタリア便り 愛犬と海水浴

映画やテレビで海岸の波打ち際を愛犬と楽しげに走り回っているシーンがよくあるが、秋や冬ならともかく、夏の海水浴シーズンにはイタリアでは見られない光景だ。イタリア人が飼育する犬の数は700万匹といわれているが、ほとんどの海水浴場は市町村が条例を作り、犬の立ち入りを禁止している。人里離れた公共の海岸でも、夏季は早朝と夜8時以降以外は禁止され、違反者には最高100ユーロ(約1万4千円)の罰金が科せられる。

とはいえ、犬の連れ込みが自由な海浜施設が存在しないわけではない。

イタリア北部ではアルビソーラの「バウ・バウ(ワン・ワン)・ヴィレッジ」や、トスカーナのサン・ビンチェンツォの「ドッグ・ビーチ」などは有名だ。多くの海水浴客が集まるエミリア・ロマーニャ州のアドリア海沿岸には、愛犬の連れ込みが可能な施設が20カ所以上もあり、今年も愛犬同伴者以外はお断りの新しいドッグ・ビーチが開設された。

だが、車に愛犬を乗せ、混雑する高速道路を炎天下で何百キロも走り、しかも肩身の狭い思いをして海辺に連れて行くのは決して楽なことではない。

テラスや庭にゴムのプールを用意して、犬を遊ばせてやった方が健康的だと思うのだが。

坂本鉄男

(2014年8月3日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)