坂本鉄男 イタリア便り 市民の声の勝利

 舛添要一前都知事は、最後は彼を推してきた自公両党などの不信任決議案提出によってとどめを刺されたが、知事の職にしがみ付く舛添氏を本当に辞任に追い込んだのは、怒れる都民の声であった。

 去る19日に行われたイタリア各地の市長選挙で、首都ローマおよび北伊の大工業都市トリノの両市で新興政党「五つ星運動」の若い女性候補が、政権与党の推す候補を大差で破った原動力も、同じく怒れる市民の声であった。

 ローマ市の場合、長年にわたり左右既成政党の推す市長が、いずれも汚職・ゴミ処理・市営交通など、市民生活に直接つながる問題の解決に失敗。このため、市政運営になんのしがらみのない五つ星運動の若い女性候補ビルジニア・ラッジ氏(37)に大なたを振るってもらおうと考えたのは当然であった。

 最強左翼労組の金属労連の牙城であるトリノ市の場合も、これの上にあぐらをかいてきた旧共産党出身の大物政治家で現職のピエロ・ファッシーノ氏が、これまた、五つ星運動の若き女性候補キアラ・アッペンディーノ氏(32)に敗れた。これも時代の流れを象徴している。

 2013年の総選挙で多数の議席を得ながら目立った活動をしてこなかった五つ星運動の今後の動きに興味がある。

坂本鉄男

(2016年6月26日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)