坂本鉄男 イタリア便り カトリック教徒と火葬

 かつてカトリックは、世界が終末を迎えたときに全ての死者が墓からよみがえって元のような肉体の姿に戻り、神の前で最後の審判を受け、天国に昇る者と地獄に落とされる者にえり分けられると信じていた。

 このため、死者の体は再びよみがえることができるように、墓に埋葬されなければならなかったのである。

 だが現在は、世界中に火葬が普及した上、墓地が少なくなってきた。1963年の第2バチカン公会議で規則を緩め、各国の習慣や法律に従い火葬を認めざるを得なくなった。

 実際、バチカン市国のおひざ元であるイタリアでも、統計局によると昨年は火葬が全体の約20%までに増えてきた。

 とはいえ、最近のように火葬にした後の遺灰を風で高くまき散らす風葬場ができたり、海や景勝地に散布したり、家族の遺骨を自宅にまつるようなケースが多くなると、明確な規則を作る必要に迫られた。

 この結果、ローマ法王は先頃、教理省を通じ、「土葬が望ましいことはもちろんだが、やむを得ざる場合は火葬をしてもよい。だが遺骨と灰は1つにまとめ、墓地などカトリックにふさわしい場所に保管すべし」と定めた。

 風葬や海にまくなど、もってのほかというわけである。

坂本鉄男

(2016年12月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)