2017年連続文化セミナー イタリア・ルネサンス人物伝 ― 激動の時代を生き抜く ―スタート

イタリア・ルネサンス-―この言葉の永遠の輝きは、それが生み出した数々の芸術作品・文芸作品のなかにのみあるのではない。中世から近世にかけての時代の荒波のなか、古さと新しさを織り交ぜながら新たな発想と精神をもって自らの個性を発揮していく興味深い人物が数多く現れるのもルネサンスの魅力の一つである。

この連続セミナーは、ジェノヴァ、フィレンツェ、ローマ等を舞台に、各講師が最新の研究成果をベースにこの激動の時代を生きた人々の生き様をわかりやすく語り、人物たちの行動様式から、それぞれの「ルネサンス」を感じて楽しんでもらうということを目的としている。

藤澤房俊先生のご指導の下、亀長洋子先生により企画、コーディネートされ、バラエティに富んだ人物が登場する興味深い連続セミナーがスタートできたことに感謝申し上げたい。

第1回 ルネサンスの海の英雄たち― ジェノヴァ人と地中海世界 ―(ご報告)

シリーズ第1回は、4月19日(水)に、学習院大学の亀長洋子先生に、総論として「ルネサンスとは」―まずルネサンス概念の広がり、イタリア・ルネサンスに関する現代の学問上の評価などについてのお話の後、「ルネサンスの海の英雄たち」のタイトルのもと地中海世界で活躍したジェノヴァ人についてお話をいただいた。(35名参加)。

「ジェノヴァ人、すなわち商人」と言われ、男女・階層の別なく積極的に商業活動に参加していたジェノヴァ人、あるいは「ジェノヴァの歴史はジェノヴァの外にある」「ジェノヴァの歴史はなく、あるのはジェノヴァ人の歴史である」と言われ、ジェノヴァ人はヨーロッパやアジア各地に散らばっていた。

同じく海洋国家であるヴェネツィアが「国家主義」/公的性格を持つのに対して、ジェノヴァは「個人主義」/私的性格を有しており、都市国家の枠組みを超えている。

ジェノヴァ人は中世以来、敬虔なキリスト教徒としてのアイデンティティを有しつつ、ルネサンスの先駆けともいえる人間性や合理的精神を発揮し、商人としてのみならず、海軍提督、冒険家、探検家(コロンブスもその1人)、航海者、植民者等として、そして海賊としても(海賊に2種類あって、corsaroは公的海賊、piratiは私的海賊)イタリア半島を超え海の世界で華々しく活躍した。

ドーリア家の人々などジェノヴァの英雄たちを個別に見たあと、これを総合すると、ジェノヴァ人の個性(利益追求における個人主義と「私」の強調、進取の気性、中世からの連続性)が見えてくる。わが国ではヴェネツィア人については多くのことが語られているが、今回あまり私が知らなかったジェノヴァ人についてのお話は新鮮なものであった。

(山田記)

<講師プロフィール>
 亀長 洋子(かめなが ようこ)
学習院大学文学部史学科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。イタリア政府奨学金留学生としてジェノヴァ大学に留学。専門はイタリア・地中海中世史。単著:『中世ジェノヴァ商人の「家」』(刀水書房)、『イタリアの中世都市』(山川出版社)訳書:ピーター・バーク『ルネサンス』(岩波書店)