坂本鉄男 イタリア便り 食い止めた「偽装出産」

ローマの南、ラティーナ市。強盗罪で入獄したばかりの夫と面会するために妻が偽装出産を計画した。子供連れで面会を申請すると、許可される可能性が高まると考えたためだとみられる。

 妻は、悪徳仲介業者に妊娠4カ月のルーマニア人の独身女性を探してもらい、出産と同時にその赤ん坊を受け取る契約を結んだ。近所に怪しまれないように、腹に少しずつ厚い袋を巻き付けていき、妊娠しているよう装った。

 市役所の戸籍係に何度も足を運んでは、出産の届け出の方法まで尋ねる念の入れようだった。

 そして、今年2月、届けられてきた赤ん坊を見て驚いた。黒い肌だったのだ。夫婦はともに白人。妻はすぐに「約束と違う」と赤ん坊を返した。

 一方、不審に思ったのは市役所の戸籍係。出産予定日を1カ月以上過ぎたのに、あんなに熱心だった女が姿を見せない。女の自宅の近所を訪ねたが、出産したという噂はまったくなかった。

 そこで届けを受けた警察が捜査した結果、「偽装出産」が判明した次第。赤ん坊は本当の父親である、アフリカ系移民の黒人男性に引き取られた。

 仕事熱心な公務員がいたからこそ、赤子は無事であったわけである。

坂本鉄男

(2017年7月30日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)