日本でもっとも素晴らしいのは、一部の新幹線のトイレにまで設置された温水洗浄便座だ。おかげで日本のトイレは大変清潔になった。イタリアの住宅は年々面積が狭くなっているため、温水洗浄便座が普及すれば大歓迎されると思う。ただ、イタリアの水道水は石灰質が強いのでノズルが詰まる恐れがあるかもしれない。
一方、イタリアではどこのホテルや家庭のトイレにも、便座の他に必ずあるのがほぼ同じ大きさのビデだ。お尻を洗うほか、足や靴下を洗うのに使用され、とても便利だ。
25年ほど前のこと、私が授業を担当していたナポリ大学の女子学生2人が、EUの「エラスムス大学交流奨学金制度」を利用した1年間のフランス留学から帰ってきた。彼女たちは開口一番、「フランス家庭のトイレにはビデがないのよ」と報告、クラスメートたちがその言葉にびっくり仰天したのを思い出す。
フランスで生まれたビデだが、当地の一般家庭にはさほど普及していない。現在のヨーロッパでビデが90%以上の家庭に設置されているのは南欧のイタリアやポルトガルなどで、ドイツや英国も普及率は数%にとどまっている。
南米では、南欧系移民の多いブラジルやアルゼンチンなどで利用者が多いという。
坂本鉄男
(2018年1月14日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)