坂本鉄男 イタリア便り 鳴け、鳴けヒバリ

 ヒバリは春を代表する鳥である。ヨーロッパの芸術家たちもヒバリを題材にして色々な作品を書き上げた。例えば、シェリーは「ひばりに寄せて」の詩を書き、ハイドンは弦楽四重奏曲「ひばり」を作曲した。

 こうやって考えると、芸術の国イタリアでもさぞ愛される鳥だろうと思うと大間違い。イタリア人は狩猟が大好きで、ヒバリなどの野鳥までほとんど撃ち落とし食べてしまった。

 だが、乱獲による野生の鳥獣の激減に加え、自然保護が国際的に叫ばれるようになると、さすがのイタリアでも狩猟期間を毎年9月1日から1月末日までと厳しい制限を設けた。

 だが、獲物が少なくなった上、猟期が短くなっては興味も減るわけで、狩猟人口もブームだった1970年代の180万人から最近は80万人と半分以下に大減少してしまった。

 とはいえ、イタリアは猟銃やピストルなど銃砲産業では有名な国である。狩猟人口の激減はこの業界にとっては死活問題だ。結局、議会に働きかけ、「今までの猟期は野ウサギやキツネなどほ乳類だけに適用」とし、「鳥類の狩猟は1年中お構いなし」との法改正案を上院で通過させてしまった。

 これには、環境保護団体のみならず閣内と与党の中でも大反対が起こり、幸い4月下旬、下院で改正案は否決された。

 イタリアの春の空に再びヒバリがさえずる日が早く戻るのを祈りたい。

坂本鉄男
(5月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)