坂本鉄男 イタリア便り 法は万人に平等なり

 イタリアの裁判ののろさは定評がある。世界銀行の裁判制度の効率性に関する報告でも、調査対象国181カ国中、アンゴラやガボンなどと同じ150番代という効率性の悪さだ。もちろん、ヨーロッパ諸国の中では最低という不名誉な評価をつけられている。

 だが、判事や検事たちはそんな評価は気にせず、93%の加入率を誇る一種の組合を通じ、年に48日の有給休暇など自分たちの既得権を守ることに余念がない。

 最近も、ヨーロッパ諸国を襲ったユーロ危機に対処するための政府の緊急経済政策で、公務員の昇給凍結が打ち出された途端に「スト」を宣言した。

 イタリアの司法関係者の給与は高く、任官したばかりの者でも、安いといっても年収4万ユーロ(約480万円)で、イタリア人の平均年収よりも高い。

 また昇給も自動的で、30年勤務すると年収15万ユーロ以上になるばかりか、最高給の憲法裁判所判事ともなると年俸41万ユーロで、退職後も月に2万ユーロの年金を受け取る人もいる。

 左翼過激派がテロの標的にしたこともあったように、司法の混乱は社会的混乱のもとだけに、この弱みにつけ込んで「スト」で自分たちの利益を守る態度は、非難されても当然だ。

 イタリアの裁判所の法廷には裁判官の席の背後に「法は万人に平等なり」と書かれているが、むしろ裁判官によく見えるように入り口に掲げてもらいたいものだ。

坂本鉄男
(6月27日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)