坂本鉄男 イタリア便り 移民と重婚

 昔の日本では、一般民衆でも妾を囲うのは全く不自然ではなく、皇室や大名家でも、皇后や正室のほかに沢山の典侍や側室がいたが、これは男性の跡継ぎをもうける正当な手段であった。

 実際、江戸時代の歴代天皇の生母はほとんどが典侍である。生母が典侍という最後の天皇は大正天皇で、その後、皇室でも普通の婚姻制度になった。

 だが、正式な結婚となると違ってくる。わが国では、正式に結婚した配偶者と離婚あるいは死別しないで、もう一度正式に、新しい配偶者と結婚すると重婚罪になり、2年以下の懲役、イタリアでも5年以下の懲役になる。

 しかし、ヨーロッパと境を接するイスラム諸国では、重婚を禁止しているトルコ、チュニジアなどを除き、多くの国、特に庶民の間では、「4人までの妻を持てる」との昔からのイスラムの教えが生き続け、妻帯者の約2%が2人以上の妻を持っているともいわれている。

 問題は、近年急増を続けるこうしたイスラム信者の移民である。もっとも、祖国で重婚していても、移民先では最初の奥さんだけを届ければ問題ないらしい。

 この結果、イタリアでは未確認分を含めると、イスラム重婚者は約2万件、ドイツでは約6万件、フランスでは約10万件と推定されている。

 わが国でもこうしたケースへの対応策を講じておくべきだろう。

坂本鉄男
(6月20日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)