坂本鉄男 イタリア便り 男女同率達成といっても

 耳にタコができるほど「男女同権」が叫ばれ、イタリアでは男女同権担当相まで任命されているが、男性社会には変わりがない。

 だが、最近発表された統計に珍しく男女同率に達したものがあった。なんのことはない、「喫煙者数」である。イタリアの高等保健局の発表によると、喫煙者総数1100万人のうち、男子590万人に対し、女子は520万人に達し男女がほぼ同数になったというのである。

 一番よくたばこを吸うのは45歳から64歳までで、たばこを吸い始める年齢は平均17歳だという。しかも若い女性の喫煙者が増加している。女性の10人中8人が喫煙経験者だそうだから、女性喫煙者数が男性を超える日は遠くないだろう。

 イタリアの今年度のたばこからの国庫収入は、105億ユーロ。喫煙関連の病気の治療費はその3倍だというから、国はたばこを売って国民を病気にし、しかもその治療で大損をしていることになるわけだ。

 喫煙者でもたばこをやめたい人は多いのだが、10人中7人は数カ月以内に再び喫煙を始めるそうだ。有力調査機関のアンケートによると、イタリア人の80%が禁煙場所の拡大など禁煙法強化に賛成だというから、若い女性の喫煙者増加は、一体なにを意味するのか分からない。

坂本鉄男
(9月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)