坂本鉄男 イタリア便り 世は無責任時代

 25年ぐらい前の話だが、夏休み期間中のイタリアで郵便配達員による郵便物投棄事件がよく起こったことがある。その時代、大学の授業で「日本の公務員には絶対にあり得ないことだ」と話したものだった。だが、最近の日本からのニュースを見ていると、自分があまりにも日本びいきだったと思うようになった。

 東京で30年も前に死んだ疑いがある男性が100歳以上の高齢表彰者に数えられていたばかりか、年金まで支払われていたことが発覚した。これをきっかけに、全国で100歳以上の高齢者が多数、行方不明であることが判明した。

 「長寿大国」が聞いてあきれる。いったい今まで市町村の戸籍係や年金係はなにをしてきたのだろう。

 そればかりではない。何人もの幼児が親に虐待され、揚げ句の果てに餓死させられたり、殴り殺されたりする悲惨な事件が頻発している。また、その度に児童相談所の係員や学校の教師が「何度か訪ねたが留守だった」などの責任逃れの言い訳を繰り返している。国会議員の票稼ぎの「子ども手当増額」どころの騒ぎではないはずだ。

 公約を守らない無責任な政党や政府は選んだ日本国民自身の責任だが、いい加減な公務員が多数いるのは誰の責任だろうか。海外在住の日本人の肩身は狭くなるばかりだ。

坂本鉄男
(9月5日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)