坂本鉄男 イタリア便り 国際貢献度の違い

 日本もイタリアもいざ強力な他国に攻め込まれたら自国の軍事力では到底抵抗できない。つまり、日本なら日米安保条約に、イタリアならNATOにすがらざるを得ない。このためにこそ、普段からNATO加盟国と同盟関係を強化しているのである。

 イタリアは、NATOの一員として旧ユーゴスラビア紛争、イラク戦争などには必ず派兵し戦死者・戦傷者を出してきた。

 アフガニスタンには現在も3500人の兵士が駐留している。だが、人的損失も大きく、今月9日、輸送車両を護衛していたイタリア山岳兵の装甲車がタリバン勢力の攻撃に遭い4人の戦死者を出した。

 今回の戦死者で、派遣開始以来の戦死者数は総計34人になった。特に今年はすでに12人の戦死者を出している。万が一、わが国でこんなことが起こったら直ちに倒閣騒動につながるに違いない。

 さすがにイタリアでも来年以降の撤退に向けた検討が始まったが、これまではイスラム原理主義勢力が欧米を攻撃しようとする動きがあるため、自国防衛の考えが優先されてきた。

 戦死者には毎回国葬が行われるなど、最大の敬意が払われており、軍隊から派兵反対の声は一度も出たことはない。イタリア憲法が「国民の祖国防衛の義務」を定めているからだろうか。

坂本鉄男
(10月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)