坂本鉄男 イタリア便り 国を挑発 組織暴力団

 イタリアの組織暴力団はよく「マフィア」と総称されるが、詳しくは、シチリア島の「マフィア」、半島最南端カラブリア州を中心とする「ウンドランゲタ」、ナポリを中心とする「カモッラ」の3つに大別される。

 彼らは地元企業への恐喝を手始めに、麻薬・たばこ・武器の密輸入はおろか、公共事業の受注なども牛耳ってきた。しかし、治安・司法当局は総力を挙げても撲滅できない。それどころか、国家権力にまでも暴力で対抗してきたのである。

 マフィアは1982年、国が特別に任命した国防省警察軍総司令官出身のシチリア州知事夫妻を機関銃で撃ち殺し、92年にはマフィア取り締まりに辣腕(らつわん)を振るった検事2人と護衛警官たちを乗用車もろとも爆殺した。

 今年になって司法当局に抵抗を強めているのがカラブリア・マフィアともいうべき「ウンドランゲタ」だ。1月にはカラブリア州の検察庁前で爆弾を破裂させ、6月と7月には検事長らの公用車に事故が起こるよう仕掛けをした。10月上旬には、自分たちの力を誇示するかのようにカラブリア裁判所前にバズーカ砲を置き、10月下旬からは、軍隊が司法関係者の警護に当たることになった。マフィアが治安担当者を狙うのは、社会の乱れを誘発したいからだ。

坂本鉄男
(10月24日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)