坂本鉄男 イタリア便り 本日は復活祭

 金曜日に十字架上で息を引き取ったイエス・キリストは、その日のうちに十字架より降ろされて、ある信者の私有墓地に安置された。というのは、翌日の土曜日はユダヤ教の安息日であらゆる活動が厳しく制限されていたためである。

 さて、日曜日の早朝、3人の女性が香油で死体を清めに行ったところ、墓の入り口をふさいでいた大石がよけられ、中にいた天使にキリストが復活したことを告げられたのである。

 このため、復活祭は必ず「春分の日の後の最初の満月の日の次の日曜日」に祝われる。今年も復活祭の2日前の聖金曜日に、ローマでは、法王ベネディクト16世の出席のもと、「十字架の道行き」が行われた。

 これは、キリストがローマ帝国のユダヤ総督ピラトの屋敷で死罪を宣告されてから、十字架を背負わされゴルゴダの丘を登り、死後復活するまでの14場面をしのびつつ進む儀式である。

 復活祭の語は、ラテン語圏の国語では、ユダヤ教の「過ぎ越しの祭り」というペサハに由来するラテン語パスカから出た言葉が用いられ、イタリア語ではパスクヮである。日本では英語から入ったイースターが用いられるが、これはドイツ語のオースタンと同様、ゲルマン系神話の春の女神エオストレから出た言葉であるといわれている。

坂本鉄男
(4月8日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)