坂本鉄男 イタリア便り 競争原理で大進歩

 今月上旬の日曜日、数年ぶりに特急でローマ-ナポリ間を往復した。驚いたのは、トレーニイタリア(旧国鉄で今は政府が大株主の株式会社)の場合、この区間に平日なら6本ある特急「赤い矢」号が日曜日の午前中は1本もないこと。通勤やビジネス客がいないからだろうか。幸い、財界の大物らが立ち上げた新特急会社「イタロ」には、日曜の午前中にも特急が4本あった。

 イタロは現在、ローマ-ミラノ、ローマ-ベネチアなど主要区間に最新型の車両を走らせている。どういう契約になっているのか知らないが、トレーニイタリアの線路を走っているため、所要時間はほぼ同じ。だが、旧国鉄側の嫌がらせはひどく、ミラノでもトリノでも中央駅は使用させない。ローマでも、不便なローマ・ティブルティーナ駅で発着だ。

 とはいえ、競争の原理が導入された結果、車内は清潔になり、以前の国鉄独占時代には普通だった特急の大遅延が解消されたことは大きな進歩である。

坂本鉄男
(6月16日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)