坂本鉄男 イタリア便り

坂本鉄男 イタリア便り オオカミの今昔

 だれでも幼いときにグリム童話集の「赤ずきん」を読んだに違いない。グリム童話集では悪いオオカミは最後に猟師によって殺され、赤ずきんとおばあさんは助かるが、多くの民話では赤ずきんもおばあさんもオオカミに食い殺されることになっている。 昔のヨーロッパではオオカミは人や家畜の大敵であったが、わが国でもニホンオオカミが1905年を最後に絶滅したように、イタリアでも1950年代末に大部分のオオカミは羊飼いた.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 飛行機より高いタクシー

 現在の航空業界は格安航空全盛時代である。数カ月前の新聞にいろいろな格安航空会社の値段表が出ているのを見てビックリした。安い! これで安全運航をしてくれるなら本当に安くなったものだ。 たとえばミラノ・マルペンサ空港について挙げると、ミラノ-コペンハーゲンが39・99ユーロ、ミラノ-バルセロナ34・99ユーロ、ミラノ-パリ21・99ユーロだった。 もちろん以上の値段はすべて片道運賃だ。 さらに私の住.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 落書き退治

 イタリアの都市を訪問した経験のある方は、商店の壁やシャッター、橋の欄干から電車やバスの車体に至るまであらゆる所で大きな落書きをごらんになったに違いない。ごく最近もローマのユダヤ教会の歩道にある犠牲者の記録を彫った敷石をスプレーで汚した不届き者がいた。 こうした損害は非常に大きく、壁や車両の落書きを消す費用だけでも全国で年間7億5千万ユーロ(約922億円)もの巨額に上ると推定されている。国全体にと.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り サメ食い人間

 サメは昔から人間を襲う獰猛(どうもう)な海の悪魔と考えられてきた。 神話の「大国主命と因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)」のサメ(山陰ではワニとも呼ばれる)はまだしも、スティーブン・スピルバーグ監督の映画「ジョーズ」の巨大な人食いザメは人間の大敵である。 だが、現在は「人食いザメ」と言ったら逆にサメの方から抗議が出る。日本では昔からサメは下級魚に分類され、切り取って干したヒレが中華材料として利用.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 聖人への道の険しさ

 ポーランド出身の前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世は、死後ただちに、あらゆる方面から「すぐに聖人に」という声が上がったほど近年まれなる偉大な法王であった。だが、いくら偉い前法王でも一足飛びに聖人にはなれない。 ごく簡単に言えば、専門の機関が聖人の資格審査を始めると「神の僕(しもべ)」と呼ばれ「尊者」の宣言を受ける。続いて聖人になる前の段階の「福者」になる審査を受ける。 だが、この審査は最低1つの奇跡.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り シーザーの命日

 古代ローマ帝国の基礎を築いた英雄ユリウス・カエサル(英語名ジュリアス・シーザー)は、紀元前44年3月15日の朝、ローマ元老院で暗殺された。 元老院と言ってもフォーロ・ロマーノに現在再現されている元老院ではなく、ローマの著名な将軍兼執政官ポンペウスがローマ市民に贈った大劇場兼議事堂であった。当時、元老院の会議場としてしばしば使用されていた。 これは、現在のローマ市の中央部にあるアルジェンティーナ広.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 車はヒマ人のもの

 イタリアも不景気なはずなのに、昨年秋以来、ローマ市内の車の数は明らかに増えている。 わが家の周囲でも道路の両側は路上駐車の車でビッシリだ。月に1、2回思いだしたように警官がやってきて目に余る二重駐車の車や歩道を勝手に占領している車に反則切符をはり付けるが、このペースで追いつくはずもなく「駐車違反の罰金とは運が悪い人間だけに振り掛かる一種の災難」と思われても仕方がない。 なにしろ市民の多くがバスや.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 天気予報の的中率

 昔、天気予報の的中率が低かった時代に、遠足や運動会の前日、下駄を放り上げ自分で天気を占ったり、てるてる坊主に頼ったりした経験をお持ちの方は多いに違いない。 最近の新聞によると、英BBCが90年間続いた英国防省所属気象部との契約を打ち切るらしい。もちろん、理由は的中率の悪さ。イタリアの場合も、国営テレビの予報は空軍の気象班が担当し、軍服姿の尉官か佐官級の予報官が解説する。 さて、的中率だが、197.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 一生、すねをかじられる

 近ごろは、子供が欲しくないという若い夫婦が増えてきたといわれる。だが、イタリアの最近の裁判を眺めていると、一概に彼らの選択が間違いだとは断言できないような気がする。 最近、北イタリアのベルガモ市の裁判所が、32歳でいまだに大学に在籍して職に就いていない無職の女性が父親を相手取って起こした養育費支払い請求を正当なものと判断し、月350ユーロ(約4万3千円)の支払いとこれまでの未支払い分の一括支払い.... Read more
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坂本鉄男 イタリア便り 衣は僧を作らず

 衣は僧を作らず-とは、見かけだけ繕っても人間の本当の中身はできないという意味のことわざである。日本人的な発想から生まれたもののように見えて、実は、もともと欧米のことわざから出たものである。 この2月初旬のこと。ローマの4大寺院のひとつであり、バチカン市国の治外法権に守られたサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ寺院で、このことわざが永遠の真理であることを証明するような事件が起きた。 その日の朝、9時.... Read more