坂本鉄男 イタリア便り シーザーの命日

 古代ローマ帝国の基礎を築いた英雄ユリウス・カエサル(英語名ジュリアス・シーザー)は、紀元前44年3月15日の朝、ローマ元老院で暗殺された。

 元老院と言ってもフォーロ・ロマーノに現在再現されている元老院ではなく、ローマの著名な将軍兼執政官ポンペウスがローマ市民に贈った大劇場兼議事堂であった。当時、元老院の会議場としてしばしば使用されていた。

 これは、現在のローマ市の中央部にあるアルジェンティーナ広場の近くにあった。

 シーザーは前年9月に終身独裁官という最高の称号を得てあらゆる権力を一手にしたが、同時に彼の権力集中を恐れ、憎んだ政敵に命を狙われることになる。この日、彼が元老院に赴き席に着くと、暗殺加担者たちが尊敬の念を表すかのように彼を取り囲み、殺害実行が始まった。

 シーザーは、振り上げられた多数の短剣を見て覚悟を決め、死に際の体面を保つため自分の衣服をのばし、足まで覆った。

 しかし身体の23カ所を傷つけられ、議事堂の建設者ポンペウスの巨大な大理石像の足下で死んだ。

 ローマが世界に類のない都市であるのは、2000年以上も前にシーザーの暗殺事件を見守っていたこの大理石像が、現在でも市内のスパーダ館に残っていることである。

 「ローマは1日にしてならず」の諺(ことわざ)は正しい。

坂本鉄男
(3月14日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)