坂本鉄男 イタリア便り 有名人の「最後の晩餐」

 来週の日曜日は、イエスがはりつけにされた後、復活したことを祝う復活祭(イースター)である。イエスは前日の夜、12人の弟子と最後の晩餐(ばんさん)を共にした。この席で、パンを割って弟子に与え「これを私の体だと思って食べよ」と言い、赤ワインの杯を手に「これは私の血である。多くの人のために流される契約の血である」と言ったとされる。カトリック教会の「聖体拝領」の儀式は、これが元となっている。

 さて、有名人の最後の食事とは、どんなものだったのだろう。米国の異色の料理人A・カルドウェルの著作「彼らの最後の晩餐」から近代以降の幾つかの例を引用すると、リンカーンは「ウミガメ(実際はオックステール)のスープ、クリを添えたローストチキン、ポテトの紙包み焼き」など、ヒトラーは「野菜スープとポテトピューレ」を食べたという。ケネディ大統領の最後の朝食は「半熟卵、ベーコン、ジャムとトースト、オレンジジュース」、彼の愛人とされたマリリン・モンローの夕食は「ガスパチョ(冷製スープ)、アボカド付きチキン、メキシコ風ミートボール」だったという。

 以上の食事は暗殺か自殺前にとったものだが、現代の多くの有名人と異なって寂しい病院食でなかったことは、せめてもの慰めというべきか。

坂本鉄男

(2014年4月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)