坂本鉄男 イタリア便り 破門とは

ローマ法王フランシスコは21日、イタリア南部カラブリア州を訪れ、信者らを前に「マフィアは悪である。私は彼らを破門する」と断言した。

わが国では「彼は師匠に反抗し、破門された」などの表現が簡単に使われるが、カトリックにおける破門とはカトリック宗教界からの追放を意味する重大な断罪だ。

われわれは西洋史で「カノッサの屈辱」を習ったことがある。神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世が司教の任命権をめぐりローマ法王グレゴリウス7世と争い、互いに皇帝の破門と法王の廃位を宣言した。

皇帝の破門は部下の従属義務を廃止することをも含み、ハインリヒ4世に反対するドイツ諸侯も動き出した。結局、1077年1月、皇帝は北イタリア山中のカノッサ城に滞在中の法王を訪れ、雪の中を三日三晩はだしで城門の前に立って破門を解くことを嘆願した。これは、たとえ、昔の話であっても、カトリック教会の破門を知る一例になるだろう。

これまでの法王もマフィアに改悛(かいしゅん)を呼びかけることはあったが、このような「破門宣言」を下したことはなかった。

この法王の断罪が、マフィア組織が根を張るカラブリアの対マフィア運動の助けになるとよいのだが。

坂本鉄男

(2014年6月29日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)