坂本鉄男 イタリア便り 勇気ある「決断」

夏は海水浴客でにぎわい、毎年2月のカーニバルでは大型の山車の行列で国際的に有名なトスカーナ州ビアレッジョ市の有能な女性副市長、キアーラ・ロマニーニさん(31)が突然、こう宣言した。

「私は幼少時から自身の問題だった、性の転換手術を9月に受ける予定だ。このための裁判所の戸籍手続きも終わり、今は手術前のホルモン療法を受けているところだ。男性となったら結婚し、父親になるつもりだ」と。驚いた市民たちも、副市長のこの堂々たる発表に称賛を送った。

イタリアでの性転換手術は多く、例えば、ローマのサン・カミッロ病院の性転換手術センターでは、過去20年間で400件もの手術を行ったという。昔は外国に行って手術を受けた人が少なくなかったというが、最近はイタリアの病院で受ける人が大半で、サン・カミッロ病院でも最近5年間に希望者が25%も増加したという。

その内訳は、60%が男性から女性に性転換するもので、残りの40%がその反対のケースだという。また、学歴で見ると約10%が大卒だそうだ。手術にあたっては、精神医や心理学専門家も参加し、転換と同時に戸籍変更ができるよう裁判所の担当者もいるという。1人で悩まず、恥ずかしがらずに決断することが大切だそうだ。

坂本鉄男

(2014年8月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)