坂本鉄男 イタリア便り 遠のくイタリア人法王

昔はローマ法王といえばイタリア出身者に決まっていた。実際、オランダ出身のハドリアヌス6世(在位1522~23年)以来、ポーランド出身のヨハネ・パウロ2世(同1978~2005)の選出までの455年の長期にわたり、イタリア出身者だけがローマ法王に選ばれてきた。

法王選挙(コンクラーベ)は現行選挙法によれば、80歳未満の枢機卿によって行われる。昔、イタリア人だけが法王に選出されていた時代には、イタリアとその他の欧州出身の枢機卿が絶対的な多数を占めていた。

ヨハネ・パウロ2世以降、現在まで3代続く非イタリア出身の法王は、欧州出身ではない枢機卿を任命することが多くなった。閉塞(へいそく)感が強くなっていた法王庁内部に新風を導入するためであり、信者数が激増しているアジアやアフリカ、中南米の枢機卿を増やすことで、欧州中心だったカトリック教会の普遍性を示すためでもある。

アルゼンチン出身の法王フランシスコは、2月14日と15日の枢機卿会議で20人の新枢機卿を任命した。多くは欧州以外である。これにより選挙権がある枢機卿125人のうち欧州出身は57人と、半数を割り込んだ。イタリア出身の法王が出る可能性はますます遠のいてきた。

坂本鉄男

(2015年2月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)